もの忘れ

人の名前が出てこない、言葉が出てこない、健忘症
 

だれでも歳をとるともの忘れをするようになります。わたしたちの記憶力は30歳から40歳をピークにゆっくり低下していくことが知られています。しかしこのもの忘れには病的なもの忘れと年齢相応におこってくる生理的なもの忘れが存在します。
病的なもの忘れはやがて認知症という重大な病気につながっていくことがあり要注意です。

◯生理的なもの忘れ
それでは良性の生理的なもの忘れと病的なもの忘れはどのように区別するのでしょうか。
老化現象の一部としての良性のもの忘れの特徴としては障害の範囲が限定されていて、たとえば

①人の名前や物の名前が出てこない、漢字が思い出せないといった現象です。
テレビをみていて俳優さんの顔は知っていても名前が出てこない経験は誰でもあることでしょう。
②言葉を言い間違えて自分では気付かない。
③とっさに言葉がでてこなくて、言葉につまる。
④置き忘れ、ど忘れ、立ち上がった途端に用事を忘れる。
⑤うっかりミス、勘違い。

これらの出来事はその場ではでてこなくても後で思い出したり、別の機会ではきちんと思い出せたり話せたりします。そのために日常生活や職業活動などに支障をきたすことはありませんし、それまでの恒久な精神活動も維持されます。また忘れたり言葉が出てこなかったことに対して本人に明白な自覚があります。

◯病的なもの忘れ
これに対して、病的なもの忘れでは、ものの名前といった狭い範囲の思い出しができないだけでなく、以前に自分のした経験そのものが残らないという忘れ方をします。
また病的なもの忘れでは思い出せないというだけではなく時間の感覚があいまいになり、日付や曜日、季節などがわからなくなったり(時間の見当識障害)、今いる場所がわからなくなったりします(場所の見当識障害)。
このような記憶障害がおこると、日常生活に支障が出てきます。それは単にもの忘れをするのではなく、段取りよく物事を進めたり、計画したりすることが難しくなるからです(遂行機能障害)。具体的には買物をすることが難しくなったり、料理をすることが困難になったりします。

また生理的なもの忘れでははっきりとしたもの忘れに対する自覚がありましたが、病的なもの忘れでは、自覚はあるものの表面的です。これは自分を正しく評価する、自分を省みるということが困難になっているためです。自分を省みるためには、今自らがおこなった行為を、過去の経験に照らし合わせて検証するという手続きが必要となりますが、今行った行為が記憶から消えてしまっていますから、検証のしようがないのです。

先ほどの例でいうと料理はできなくなりますが、ご本人はできないのではなくやらないのだというようになります。またできないことに対してさかんにいいわけをするようになります。このような病的なもの忘れにきがついたら早めに医療機関への受診をお勧めします。