公開日:2025.02.04

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?定義や目的・進め方を解説

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?定義や目的・進め方を解説

アドバンス・ケア・プランニングは、人生の最終段階に向けた希望を周りの人と共有する取り組みです。
この言葉の意味を知らなくても、医療や介護に関わるなかで「ご自身やご家族の望む最期にしたい」と願う方は多いでしょう。

この記事では、アドバンス・ケア・プランニングの定義や目的を解説します。
実際に始めるタイミングや進め方も紹介するので、アドバンス・ケア・プランニングを実践したい方は、ぜひ参考にしてください。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、万が一の場合に備えてご本人の希望や意思を話し合う取り組みです。
実践する際は、以下3つの重要な側面への理解を深める必要があります。

  1. 定義と目的
  2. 前提となる「生命倫理の4原則」
  3. AD・リビングウィル・事前指示書との違い

それぞれ詳しく見ていきましょう。


定義と目的

アドバンス・ケア・プランニングの定義は、ご本人の価値観を明確にし、医療・ケアの目標や内容について話し合い共有するプロセスのことです。
目的は自分らしく生き抜くことであり、それゆえに「人生会議」とも呼ばれています。

アドバンス・ケア・プランニングが注目されるようになった背景には、超高齢化社会における医療やケアの課題があります。
たとえば、認知症などで意思決定できない場合、ご本人が延命治療を望んでいるのかがわかりません。

このような事態を避け、ご本人の意思を明確にし共有することが、最適な医療の提供につながります。

引用元:日本医師会|終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える


前提となる「生命倫理の4原則」

アドバンス・ケア・プランニングの前提となっているのは、下表に示す「生命倫理の4原則」です。

原則概要
自律尊重ご本人の決定や意思を大切にして、行動制限や干渉はしない
無危害・他者に危害を及ぼさない
・健康の維持・回復を図る
善行対象者に最善を尽くし、利益をもたらす
公正すべての人が平等に医療を受けられるよう、医薬品などの資源を公平に配分する

医療や介護の現場では、治療方針がご本人の意思に沿わないケースも少なくありません。
たとえば、「苦しくても自宅で最期を迎えたいと望んでいる方に、入院して医療ケアを行うことは最適な選択なのか」などの悩みが発生します。

このような倫理的問題に直面した場合、生命倫理の4原則がアドバンス・ケア・プランニングの実践において重要な指針となります。

引用元:厚生労働省|医療通訳 3.専門職としての意識と責任 3-1医療倫理


AD・リビングウィル・事前指示書との違い

アドバンス・ケア・プランニングと似た意味を持つ言葉は、下表の3つです。

意味
アドバンス・ディレクティブ(AD)判断能力を失った際に行われる、医療行為への意向を事前に示すこと
リビングウィル終末期における延命治療や尊厳死の意思を示した文書
事前指示書・意思決定できなくなる将来に向けて、終末期に絡むすべてを指示する文書
・代理に判断する人の指定も含む文書

どの言葉にも、根底には「意思決定できない将来に備えたい」という願いがあります。
ご本人が意思を表明し、他者と共有する姿勢を持つことが、より最適な選択につながるでしょう。

引用元:公益社団法人東京都医師会|アドバンス・ケア・プランニング(ACP)ー人生会議ー


アドバンス・ケア・プランニングを始めるタイミング

アドバンス・ケア・プランニングを始める際は、タイミングが重要です。
タイミングが早すぎると不明確となり、遅すぎると実施されにくくなるため、下表のような目安に基づき始めます。

開始のきっかけ・痛みや呼吸困難など、重い身体症状が出始める
・抑うつや不安など、重い精神症状が出始める
・意思決定やケアに関する計画でサポートが必要になり始める
・ご本人に緩和ケア受診の意向があらわれる など
対象者の状態・病状改善の見込みが限られており、日中の半分以上をベッドで過ごしている
・身体・精神において、ほぼすべての日常生活にサポートが必要である
・病気に適切な治療が行われているにもかかわらず、辛い症状が続いている
・ご本人が緩和ケアや治療の中止を希望している など

とはいえ、健康な方には遠い未来の選択となり、厚生労働省の調査では約半数が途中で意向を変更する結果となっています。
病状の変化に伴いご本人の意思も変わるため、複数に分けて話し合う時期を持つことが大切です。

なお、将来の生活拠点を考えることもアドバンス・ケア・プランニングの一部になります。
たとえば、自立しているけれど自宅での暮らしに不安がある際は、生活拠点の選択肢としてサ高住が有効です。
サ高住の費用やサービス内容を詳しく知りたい方は、下記の記事をチェックしましょう。

【関連記事】サ高住とは?費用・入居条件・サービス内容・問題点など基礎知識を解説

引用元:厚生労働省|アドバンス・ケア・プランニング いのちの終わりについて話し合いを始める


アドバンス・ケア・プランニングの進め方

アドバンス・ケア・プランニングの進め方について、以下の2つを解説します。

  1. 一般的な流れ
  2. 話し合う内容の例

それぞれ詳しく見ていきましょう。


一般的な流れ

アドバンス・ケア・プランニングはご本人を主体として、以下の流れで進めていきます。

  1. 病状に対する理解度の確認
  2. 希望や意思を明確にする話し合い
  3. 代理決定者の選定
  4. 生活における不安や意思の表明
  5. 治療法の選択
  6. 代理決定者が判断する自由度の決定

アドバンス・ケア・プランニングは強制される取り組みではなく、将来の変化に対する備えである点は頭に入れておきましょう。
ご本人につらそうな反応や言動があった場合には一旦中止し、時間をかけて進めていくことが大切です。

なお、話し合う際は、以下のメンバーが一般的です。

  • ご本人
  • ご家族や信頼関係にある方
  • 医師や看護師
  • 介護支援専門員 

ご家族など信頼関係のある人はご本人が意思決定できない状態になった場合、決断を下す重要な存在となります。


話し合う内容の例

アドバンス・ケア・プランニングで話し合う内容の例は、以下のとおりです。

  • 家族構成や日々の生活
  • 健康状態で気になっている点
  • 生活するうえで大切にしてきたこと
  • 大切な人に伝えておきたい内容
  • 経験してみたいこと
  • 最期に過ごしたい人や場所
  • 医療やケアについての希望 など

ご本人の価値観や人生観を知りたいという姿勢が、信頼関係につながります。
アドバンス・ケア・プランニングでは、信頼関係の構築と意向に寄り添う姿勢が鍵となるでしょう。


アドバンス・ケア・プランニングのメリット・デメリット

アドバンス・ケア・プランニングのメリット・デメリットは、下表のとおりです。

メリットデメリット
・ご本人の気持ちが整理される
・最期を迎えたい場所の希望が明確になる
・医療やケア従事者との関係性が深まる
・ご家族の満足度が向上し、亡くなった後の不安や抑うつが減少する
・時間と手間がかかる
・ご本人とご家族にとって、つらい体験になる可能性がある

アドバンス・ケア・プランニングは、ご本人とご家族の双方にとって満足できる未来につながります。
実践することで質の高いケアの選択が可能となる点は、大きなメリットといえるでしょう。
ただし、そのためにもご本人の気持ちに寄り添い、話し合いを繰り返すことが重要です。

引用元:厚生労働省|アドバンス・ケア・プランニング いのちの終わりについて話し合いを始める


アドバンス・ケア・プランニングの現状

アドバンス・ケア・プランニングの現状について、以下2つの観点から解説します。

  1. 看護師・介護支援専門員などの認知度
  2. 話し合いの有無

令和5年の厚生労働省による調査では、アドバンス・ケア・プランニングに対する一般の方の認知度が5.9%でした。
72.1%の方が知らないという結果となり、周知されていないことがわかります。
現状について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

引用元:厚生労働省|令和5年 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書


看護師・介護支援専門員などの認知度

アドバンス・ケア・プランニングに関する看護師・介護支援専門員の認知度は、下表のとおりです。

 知っている知らない
看護師45.8%19.6%
介護支援専門員47.5%11.5%

認知度が約半数ほどで留まっている点は、今後の課題といえるでしょう。

なお、人生の最終段階を迎える場所は、病院だけとは限りません。
施設や自宅においても、アドバンス・ケア・プランニングの意識を持つ看護師や介護支援専門員の存在は重要です。

このような専門的なサポートを提供するため、弊社ゴールドエイジでは、一部の館にケアマネジャーが在籍しています。
また、在籍していない館では、地域のケアマネジャーと連携し、入居者様に最適なケアプラン立案の作成に努めています。

アドバンス・ケア・プランニングを含む、介護支援専門員と連携した支援を受けながら安心して生活したい方は、施設一覧ページをご覧ください。

引用元:厚生労働省|令和5年 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書


話し合いの有無

令和5年厚生労働省の調査によると、家族などと話し合った経験がある方は29.9%に留まっています。
さらに、話し合っていても、医療・介護ケアスタッフと内容を共有していない方は81.6%に上ります。

ご家族にアドバンス・ケア・プランニングの認知があれば、ご本人の望む最適な選択が可能です。
ただし、ご家族は介護における多くの負担を抱えており、すべてのサポートを担うのは困難です。

そのようなときは、1人で抱え込まずに誰かに相談することが大切です。
介護の悩みを相談し、アドバンス・ケア・プランニングで最適な選択を検討したい方は、下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】介護の悩み相談ができる窓口一覧|負担軽減が期待できるサービスも解説

引用元:厚生労働省|令和5年 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書


まとめ:アドバンス・ケア・プランニングで自分らしい最期を

アドバンス・ケア・プランニングは、人生の最終段階に向き合う重要なプロセスです。
ご家族や医療・ケアスタッフと話し合い、意思を共有することが、ご自身の望む最期につながります。

そのためにも、アドバンス・ケア・プランニングを実践できる環境が必要です。
なお、弊社ゴールドエイジでは、サ高住や老人ホームなど、多数の施設を運営しています。

アドバンス・ケア・プランニングに深く携わるケアマネジャーが在籍する館もあり、入居者様に寄り添ったサポートを提供しています。
ご本人やご家族の望む最期を実現したい方は、ぜひ施設一覧ページをご覧ください。

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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。