公開日:2024.10.15
更新日:2024.10.16

認知症の家族を介護するのがつらいときの原因と対処法|相談先も解説

認知症の家族を介護するのがつらいときの原因と対処法|相談先も解説

認知症のご家族を介護していると、つらい気持ちを抱えてしまうケースも少なくありません。
認知症介護を乗り越えるためには、つらいと感じる原因を知り適切に対処することが大切です。

この記事では、認知症のご家族を介護するのがつらいときの原因と対処法について解説します。
介護者の方が相談できる場所や支援を依頼できるサービスも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

認知症の家族を介護するのがつらいのは自分だけではない?

在宅介護のなかで、介護者がつらいと感じやすいのが認知症介護です。
ご本人が認知症を発症すると、その発言や行動に思いがけない変化が表れます。
その結果「言うことを聞いてくれなくて、つい大きな声を出してしまった」「病気だとわかっているけど、やさしく接することができない」と、介護者はつらい気持ちを抱え込んでしまうのです。

実際に、在宅介護の実態を全国規模で調査した結果では「認知症状への対応」が大変なことランキングの第1位となりました。
認知症のご家族を介護することに、つらいと感じるのは不自然なことではありません。
「つらいと感じるのは間違っているのだろうか」と、ご自身を責めないようにしましょう。

在宅介護で大変なことや負担の軽減方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【関連記事】【家族だからこそ】在宅介護で大変なことランキング|負担の軽減方法も解説


「認知症の家族を介護するのがつらい」を放置すると起こる問題

つらいと感じる気持ちを放置すると起こる問題は、主に以下の2つです。

  1. 介護うつで共倒れになる
  2. 虐待行為が増える

それぞれの詳しい内容をみていきましょう。


問題①:介護うつで共倒れになる

「認知症の介護がつらい」という気持ちを放置すると、介護うつによって共倒れしかねません。
介護うつとは、介護疲れやストレスなどが原因となり、介護者がうつ病を発症することを指します。

うつ病を発症すると、「悲しく憂うつな気分が一日中続く」「疲れやすく、何もやる気になれない」といった状態に陥る可能性があります。
その結果、認知症のご家族に必要な介助を提供できなくなるリスクが高まるのです。

一方の介護者は「必要な介護ができなかった」と、さらに落ち込むという悪循環に陥る可能性があります。
うつ病による共倒れを防ぐためにも、日頃からつらいと感じる気持ちを放置しないようにしましょう。


問題②:虐待行為が増える

つらいと感じる気持ちを放置すると、介護者による虐待行為が増加する恐れもあります。
虐待行為とは下表のように、高齢者の人権を侵害する行為全般です。

種類内容
身体的虐待外傷が生じるおそれのある暴力をくわえること
介護・世話の放棄や放任・衰弱させるような減食
・長時間の放置
・介護者以外の同居人による虐待行為の放置
心理的虐待暴言や著しい拒絶的な対応によって、高齢者に心理的外傷をあたえるような言動
性的虐待・わいせつな行為をすること
・わいせつな行為をさせること
経済的虐待・財産を不当に処分すること
・不当に財産上の利益を得ること

このような虐待行為が増える原因に、介護者のストレスが挙げられます。
つらいと感じる気持ちを放置した結果、抱えたストレスのはけ口がご本人に向かってしまうかもしれません。

「虐待をしない」「虐待行為を増やさない」ためには、介護者が意識してご自身の心身を労わることが大切です。


認知症の家族を介護するのがつらくなる2大原因

認知症のご家族を介護するのがつらくなる原因は、主に以下の2つです。

  1. 認知症の症状悪化
  2. 介護者の体調不良

それぞれの具体的な内容をみていきましょう。


原因①:認知症の症状悪化

認知症の症状悪化は、介護がつらくなる大きな原因です。
認知症が悪化すると、以下のように行動や言動が大きく変化するためです。

  • 日付や曜日がわからなくなる
  • 同じ質問を何度も繰り返す
  • 少し前の出来事を記憶できない
  • こちらの質問を理解できない
  • 外出したら帰ってこられなくなる
  • 食べ物ではないものを口にしてしまう など

このような思いがけない変化が表れると、ご本人の安全を守るために介護者はますます奮闘することになります。
すると、介護者の心身にさらなる負担がかかるようになり、次第に認知症介護がつらくなります。


原因②:介護者の体調不良

介護者の体調不良も、認知症介護がつらくなる原因の1つです。
認知症介護では、食事や排せつといった日常行為全般にサポートが必要になります。
その結果、日々ご本人を介助する介護者が肩や腰を痛めてしまうのです。

また、徘徊や異食(※)を防ぐために、常に神経を張り巡らせている介護者も少なくありません。
心身にストレスがかかる状況は、介護者を追い詰めてしまうため介護うつを発症する可能性が高くなります。
※食べ物以外のものを食べること


認知症の家族を介護するのがつらいときに相談できる場所

認知症のご家族を介護するのがつらいときは、ご自身の気持ちを誰かに吐き出すことが大切です。
しかし、ご家族や親戚などの身近な方には、素直な気持ちを言いにくいでしょう。

「相談したいけど、相談できる場所がない」と感じるときは、介護者のサポートを目的として運営されている公的な相談窓口を頼るのも1つの方法です
具体的な相談窓口は、以下のようなものが挙げられます。

  • 地域の居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)
  • 病院や診療所におかれている医療相談室(医療ソーシャルワーカー)
  • 地域包括支援センター
  • 自治体窓口
  • 電話相談

各相談窓口の詳細を知りたい方は、こちらの記事を確認してみてください。

【関連記事】介護の悩み相談ができる窓口一覧|負担軽減が期待できるサービスも解説


【介護がつらいとき】認知症の方を支援するサービスの選択肢

認知症の介護がつらいときに利用できるサービスは、以下の3つです。

  1. 訪問サービス
  2. 通所サービス
  3. 入居サービス

それぞれのサービス内容を確認して、ご自身やご家族の希望に合ったサービスを探してみましょう。
認知症との付き合い方で押さえたいコツについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】認知症の家族との上手な付き合い方|ポイントや症状別の対応・NG行為も


選択肢①:訪問サービス

訪問サービスとは、ご本人の自宅や生活の拠点に施設スタッフが訪問する介護サービスです。
代表的なサービスは、以下のとおりです。

  • 訪問介護
  • 訪問リハビリテーション
  • 訪問看護

仮に訪問介護を利用した場合、食事作りや買い物などの生活援助サービスを受けられます。
必要に応じて入浴介助や排せつ介助も受けられるため、介護にかかる心身の負担を軽減しやすくなります。

ご本人の状態やご家庭の状況を確認して、適切な訪問サービスがないか探してみてください。


選択肢②:通所サービス

通所サービスとは、介護施設にご本人が通って必要な支援を受けるサービスです。
1日単位でサービスが終了するため、主にデイサービスと呼ばれています。
代表的なサービスは、以下のとおりです。

  • 一般型デイサービス
  • 認知症対応型デイサービス
  • リハビリ特化型デイサービス

認知症対応型デイサービスは少人数で運営されており、ご本人のペースで過ごしやすい空間となっています。
介護者にとっても休息の時間をとれるようになるため、疲れが溜まりすぎる前に通所サービスの利用も検討してみましょう。


選択肢③:入居サービス

入居サービスとは、ご本人が施設に入居して食事や入浴などの日常生活のサポートを受ける介護サービスです。
24時間体制で介護サービスを受けられる主な入居施設は、以下のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅

入居サービスを利用するメリットの1つが、物理的な距離ができることです。
在宅介護では相手が家族だからこそ、お互いに期待したり失望したりしてしまうこともあるでしょう。
しかし、施設に入居して適度な距離をおくことで、お互いに穏やかな気持ちでコミュニケーションを取れるようになります。

また、介護の専門家に支援をお任せすることで、ご本人の認知症の症状が落ち着くケースも少なくありません。
以下のページでは入居可能な施設を一覧で紹介しています。
ご本人やご家族が心穏やかに過ごせるように、ぜひお近くの施設をご覧ください。

なお、認知症の方が入所をご希望される場合、事前面談がございます。
症状によっては入所いただけないケースもございますので、あらかじめご了承くださいませ。

認知症介護を実践している施設を探している方は、下記の記事も参考にしてみましょう。

【関連記事】「認知症向け介護施設一覧|入所にかかる費用や選び方のポイントも解説」


まとめ:認知症の家族を介護するのがつらいときは無理しない

在宅介護では、介護者が心身の健康を維持することが重要です。
介護者の方がつらいと感じる状況を放置してしまうと、最終的に体調を崩してしまいます。
ご本人と介護者が安心して生活を続けるためにも、認知症向けの介護施設について早めに情報収集しましょう。

なお、弊社ゴールドエイジでは、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームを運営しております。
以下の一覧ページから、お近くの施設をご覧ください。

※ゴールドエイジでは認知症の方のご入居につきまして、ご入居者様の個別の状態により判断させていただいております。
認知症の診断の有無にかかわらず、他のご入居社様との共同生活や、職員のサービス提供に支障がない場合は、ご入居いただけます。

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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。