公開日:2025.05.07

緩和ケア・ホスピスケアの違いと共通点を解説|対象者・費用・提供場所など

緩和ケア・ホスピスケアの違いと共通点を解説|対象者・費用・提供場所など

緩和ケアは、がんなどの病気による身体的または精神的な苦痛を軽くするためのケアです。
一般的に緩和ケアの中には、ホスピスケアも含まれます。
しかし、「緩和ケアとホスピスケアの違いが、いまいちよくわからない」という方も多いでしょう。

この記事では、緩和ケアとホスピスケアの違いについて、対象者など3つの観点から解説します。
両サービスの基礎知識や共通点も紹介するので、緩和ケアやホスピスケアの施設探しでお悩みの方は、ぜひご覧ください。

緩和ケアとホスピスケアの基礎知識

ここでは基礎知識として、以下の2つを解説します。

  1. 緩和ケアとは
  2. ホスピスケアとは

それぞれ詳しく見ていきましょう。


緩和ケアとは

緩和ケアはがんなどの病気により生じる身体的・精神的な苦痛に対し、さまざまな専門職がチームとなってアプローチするケアです。
緩和ケアは、1970年代にホスピスケアの考え方をもとにしてカナダで提唱され、WHO(世界保健機関)により定義化されました。
WHOによる緩和ケアの定義は、以下のとおりです。

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

病気と診断された直後から緩和ケアはスタートし、病気による症状の軽減だけでなく、心理面のサポートも行われます。
死生観などのスピリチュアルケアや、困窮に対する社会的ケアも含めた幅広い支援です。

引用元:特定非営利活動法人日本緩和医療学会|「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳


ホスピスケアとは

ホスピスケアは、病気による苦痛をできるだけ和らげ、希望に寄り添って人生の最期を幸せに迎えられるためのケアです。
終末期の方が生活するホスピスでの実践を踏まえ、1960年代にイギリスで提唱されました。

ホスピスケアでは人生の最期を迎えるにあたって苦痛を和らげながら、できる限り希望の生活を実現できるようサポートします。
たとえば、「思い出の場所にもう一度だけいってみたい」という希望があれば、さまざまな機関と協力しながら病気による痛みを抑えて、目的の場所まで移動ができるよう支援します。

ホスピスケアは、限られた余命の中で生活の質を少しでも向上させるために行われる最期のケアなのです。


緩和ケアとホスピスケアの違い

緩和ケアとホスピスケアは目的や適用制度など共通点が多く、明確な線引きが難しいケアです。
違いを挙げるとすれば、主に以下の3つです。

  1. 対象者
  2. ケアの内容
  3. 提供場所

それぞれ違いを解説します。


違い①:対象者

緩和ケアとホスピスケアの対象者の違いは、ケアが開始される時期です。

緩和ケアは、病気と診断された直後から亡くなるまでの方に提供されます。
病気の治療を行うため、延命を目的にケアを受ける方を対象にしているのも特徴です。

一方、ホスピスケアは寿命が近づいている方を対象に提供されます。
病気を治癒させるための治療は行わず、できるだけ希望する最期を迎えたい方を対象にしています。


違い②:ケアの内容

緩和ケアの一部にホスピスケアが含まれるため、ケア内容に明確な線引きをするのは困難です。
あえて違いを挙げるとすれば、延命治療の有無やレクリエーションの充実に違いがみられます。

緩和ケアでは病気の状態によって積極的な治療が提供され、延命に必要なケアを行う場合もあります。
しかし、ホスピスケアでは苦痛を軽減するケアは実施されますが、延命を目的とした治療は基本的に実施されません。

また、ホスピスケアでは自宅に近い環境で安心して暮らせるよう、レクリエーションなどの余暇活動が充実しています。


違い③:提供場所

緩和ケアとホスピスケアの提供場所は、下表のとおりです。

 緩和ケアホスピスケア
提供場所・病院
・自宅
・病院
・自宅
・サービス付き高齢者住宅
・老人ホーム

緩和ケアは、病院にある病棟の1つとして設置されています。
また、病棟に入院するのではなく、外来で緩和ケアを提供している施設もあります。
訪問看護や訪問診療などを利用すれば、在宅で緩和ケアを受けることも可能です。

一方、ホスピスケアは病院だけでなく、サービス付き高齢者住宅や老人ホームなどの介護施設で提供される場合があります。

また、宗教的サービスが常設しているかどうかの点でも違いがあります。
緩和ケアでは、特定の宗教的サービスが設置されているわけではありません。
施設によっては、臨床宗教師などのスピリチュアルケアの専門家によるサポートがあります。

対して、ホスピスケアはキリスト教が母体となる施設で提供される場合が少なくありません。
どちらのケアでも、特定の宗教を勧められるわけではなく、宗教的ケアの求めがあれば対応できるようになっています。


緩和ケアとホスピスケアの違いがわかりにくい理由

緩和ケアとホスピスケアの違いがわかりにくい理由は、どちらも「病気による苦痛を和らげる」という点で、共通している部分が多いためです。
実際に提供されている治療やケアも共通している点が多く、明確な線引きが難しくなっています。
たとえば、どちらのケアでも病気で生じる痛みを和らげるため薬物療法を行い、できる限り身体的な苦痛を減らして生活が送れるように対応します。

また、日本の緩和ケア病棟では、終末期の方が入院してホスピスケアを受けている場合が少なくありません。
このように、実際のサービス提供状況が「緩和ケア=終末期のホスピスケア」と混同されてしまう原因にもなっているのです。


緩和ケアとホスピスケアの共通点

緩和ケアとホスピスケアの共通点は、以下の2つです。

  1. 目的
  2. 適用制度

それぞれの共通点を解説します。


共通点①:目的

共通の目的は、病気になったご本人やご家族が抱える、さまざまな苦痛を軽減するために必要なケアの提供です。
どちらも身体的なケアだけでなく、以下のような支援も含まれます。

  • 精神的な苦痛の軽減
  • 入退院の支援
  • 介護保険サービス活用のサポート
  • 経済面の不安解消
  • 家庭環境の調整
  • 死生観や宗教観などのスピリチャルケア など

ホスピスケアは病気に対する積極的な治療を行わない点で、緩和ケアと少し異なります。
しかし、さまざまな視点からの支援で、病気の苦痛を減らしながら、人生の最期まで生活の質を高める目的は共通しています。


共通点②:適用制度

緩和ケアとホスピスケアを病院で受ける場合、どちらも保険診療で高額療養費制度が適用されます。
高額療養費制度とは、同じ月にかかった医療費の自己負担額が上限を超えた場合、超えた分の金額が払い戻される制度です。

なお、どちらのケアを提供する病棟でも、入院期間は1か月以内が多くなっています。
2012年の診療報酬改訂により、入院期間が長くなると病院が得られる報酬が少なくなってしまうためです。

入院期間が短い分、患者側の負担費用は少なくなりますが、病気を抱えたままの退院は不安が大きい方も多いでしょう。
そのような方には、次項で紹介する弊社ゴールドエイジの施設がおすすめです。


自宅に近い環境での緩和ケア・ホスピスケアをご希望の方は

「緩和ケア病棟の退院後、自宅で生活するのに不安がある」「緩和ケアやホスピスケアを自宅に近い環境で受けたい」という方は、弊社ゴールドエイジをおすすめします。
ゴールドエイジでは、ターミナル期を穏やかに過ごすために充実したサービスを提供するナースケアホームをはじめ、緩和ケアの入居対応は基本的に全館で可能です。

ただし、入居者様の状態や必要なケアによっては、入居可能な施設が限定される場合がございます。
詳細につきましては、ぜひお問い合わせください。
近くで緩和ケアを受けられる施設をお探しの方は、施設一覧ページもあわせて確認しましょう。


まとめ:緩和ケアとホスピスケアは対象者などに違いがある

緩和ケアとホスピスケアは、対象者や提供場所などに違いがあります。
ただし、共通する部分も多く、どちらも病気による心身の苦痛をできる限り和らげて、穏やかで幸せな生活が送れるよう充実したケアが提供されます。

一方で、ケアが提供される病棟は在院日数が短縮される傾向にあり、退院後の生活に不安が伴う可能性があります。
弊社ゴールドエイジでは、緩和ケアが必要な方でも、安心して自宅と同じような生活を続けられます。

ただし、入居者様の状態や必要なケア内容によっては、入居可能な施設が限定される場合がございます。
詳細につきましては、ぜひお問い合わせください。
緩和ケアを受けられる施設をお近くで検討されている方は、施設一覧ページもあわせてチェックしましょう。

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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。