公開日:2025.07.03

【高齢者の食事】調理・献立で気をつけることとは?食べない原因や解決策も

【高齢者の食事】調理・献立で気をつけることとは?食べない原因や解決策も

高齢者にとって、食事は健康に生活を続けていくうえで重要な活動の1つです。
しかし、「食欲が無くて食べたくない」「食べにくいものが多い」と食事に悩みを抱える高齢者も少なくありません。
さらに、高齢者は窒息や誤嚥のリスクもあり、調理方法やメニューに工夫が求められます。

この記事では、高齢者の食事でよくある悩みや気をつけるポイントについて解説します。
安全に楽しく食事ができるコツもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

高齢者の食事でよくある悩みと原因

高齢者の食事では、主に以下3つのような悩みが挙げられます。

  1. 食欲減退や拒否でなかなか食べない
  2. むせ込みや誤嚥(ごえん)が怖い
  3. 低栄養や脱水が心配になる

それぞれの悩みや原因について詳しくみていきましょう。


悩み①:食欲減退や拒否でなかなか食べない

高齢者になると食欲が減り、食事量が低下したり食事自体を拒否したりする傾向にあります。
食欲減退や拒否の主な原因は、下表のとおりです。

主な原因具体的な内容
加齢・嗅覚の低下
・噛む力・飲み込む力が低下している
・味覚や嗅覚が衰え、おいしく感じられない など
ストレス・親しい人を亡くした
・孤独を感じる
・食事の介助を嫌がる など
病気・内服薬の副作用
・便秘や下痢
・認知症やうつ病
・口腔内のトラブル など

高齢者がどのような食事の悩みを抱えているのか観察し、1つずつ解決できるようアプローチしていくことが大切です。


悩み②:むせ込みや誤嚥(ごえん)が怖い

高齢者は噛む力・飲み込む力の低下から、むせ込みや誤嚥を引き起こすリスクが高まります。
食事に関連する身体機能とむせ込み・誤嚥の主な原因については、下表のとおりです。

機能咀嚼(そしゃく)嚥下(えんげ)
内容食べ物を噛み砕き、飲み込みやすい形にする咀嚼した食べ物を飲み込み、食道へ送る
主な誤嚥の原因・歯が無い
・入れ歯が合っていない
・噛む力が低下している
・舌の運動機能が低下している など
・病気(脳血管障害、パーキンソン病など)による神経や筋力が低下する
・嚥下反射が遅れて誤嚥リスクが高まる
・咽頭(いんとう)に食べ物が残り時間差で気管に入る など

これらの機能が低下すると、食べ物や唾液が気管に入りむせ込む頻度が増えてしまいます。
さらに、発熱や酸素低下を伴う「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性もあるのです。

咀嚼・嚥下機能の低下状況や適切な食事形態は人によって異なるため、必要に応じて医師や栄養士に相談してみましょう。


悩み③:低栄養や脱水が心配になる

食欲や嚥下機能が低下すると、低栄養や脱水を引き起こす危険性があります。
とくに、食べにくい食品を避けて偏った食事を続けていると、必要な栄養素が摂れず悪循環におちいるケースもあり注意が必要です。
高齢者にとって食べやすい・食べにくい食品や形状は、下表のとおりです。

▼食べやすい食品

形状具体例
おかゆ状のものおかゆ・パン粥
乳化されたものヨーグルト・アイスクリーム
とろみのついたものあんかけ・カレー
ゼリー状のものプリン・卵豆腐
ミンチ状のものハンバーグ・つみれ

▼食べにくい食品

形状具体例
硬い生野菜キャベツ・レタス
繊維が残るものごぼう・パイナップル
スポンジ状のものがんもどき・はんぺん
酸味の強いもの柑橘類・酢の物
バラバラとまとまりがないものそぼろ・こふき芋

低栄養や脱水を予防するためにも、バランスのよい食事をするとともに咀嚼・嚥下機能が落ちないよう心がけましょう。


高齢者の食事で気をつけること

高齢者の食事で気をつけたいポイントは、以下3点です。

  1. 食事形態を工夫する
  2. 栄養バランスを考えた献立にする
  3. 食べる前に姿勢を整える

安全に、そして安心して食事ができるようポイントをしっかりおさえておきましょう。


気をつけること①:食事形態を工夫する

高齢者が安全に食事ができるようにするためには、食べやすい形態での提供が必要です。
たとえば、食べにくい食材は下表のように工夫してみましょう。

食べにくい食品工夫例
硬い生野菜食材を煮込む・蒸す
繊維が残るもの繊維を断つように切れ目を入れる
バラバラとまとまりがないもの・汁物に浸してまとまりをだす
・マヨネーズなどの油分と和える
・あんかけにする

また、お茶やみそ汁などの水分でむせてしまう方は、とろみをつけると誤嚥防止に効果的です。
高齢者の身体状況を踏まえ、ご自身でも安全・安心して食事ができる環境を整えましょう。


気をつけること②:栄養バランスを考えた献立にする

必要な栄養素が不足しないよう、栄養バランスのとれた食事をとるようにしましょう。

とくに、高齢世帯や一人暮らしの場合は簡単で手軽な料理が増えるため、必要な栄養が不足したメニューになってしまう傾向にあります。
高齢者に不足しがちな栄養素とそれらが含まれる主な食材は、下表のとおりです。

不足しがちな栄養素主な食材
たんぱく質・肉類
・魚介類
・乳製品 など
ビタミン・緑黄色野菜
・豆類
・果実類 など
ミネラル・根菜類
・海藻
・ナッツ類 など
食物繊維・穀類
・いも類
・きのこ類 など

ただし、上記の栄養素を補えるようなメニューを毎食準備するのは大変です。
食材の調達や調理の負担を減らしたい場合は、必要に応じて宅食やデイサービスでの食事などを活用しましょう。


気をつけること③:食べる前に姿勢を整える

食事をする前に、高齢者の食べる姿勢に注目しましょう。
意識がはっきりしない状態や食べにくい体勢で食事すると、誤嚥する危険性が高まります。
高齢者の食事前に確認しておきたいポイントと対策案は、下表のとおりです。

悪い例対策案
ぼーっとした状態で食事している・食事の前に声かけし目を覚ましてもらう
・反応が薄ければ一度時間をおく
・食事時間を決めてリズムを作る
あごが上がっている・前かがみの姿勢がとれるよう背もたれを調節する
・クッションやタオルで支える
テーブルが高すぎるテーブルの高さをおへそあたりの高さにする
かかとが床についていない・イスの高さを調整する
・足台を使用する

正しい姿勢で食事ができると誤嚥予防につながるだけではなく、口から食べる動作を継続でき脳が活性化します。
つまり、正しい姿勢での食事は健康に生活するための基本といえるでしょう。


【高齢者が喜ぶ】食事を楽しめるようにするコツ

近年、とくに問題視されているのは1人で食事する「孤食」です。
孤食は食事の楽しさを減らし、低栄養やうつ病などにも大きく影響します。

高齢者にとって、食事は日常における大きな楽しみの1つです。
食欲減退や味覚の低下といった課題も考慮しながら、以下のように安全かつ食事を楽しめる環境づくりが求められます。

  • 食材を噛みやすく・飲みやすく調理する
  • 食欲がない場合は無理せず、ゼリーなどのさっぱりしたものを準備しておき、脱水予防する
  • 家族や友人と一緒に食事(共食)をする
  • 外食・出前をとり気分転換をはかる など

また、病気などでうまく食事ができない高齢者に対しては、持ち手の大きなスプーンや片手ですくいやすい食器を使用するのも効果的です。
高齢者の心身状況にあわせて、楽しく食事ができる環境を整えましょう。


ゴールドエイジの食事は高齢者でも食べやすいレシピが豊富

弊社ゴールドエイジでは多数のサ高住を運営しており、管理栄養士が監修した豊富なメニューと安全管理に配慮した食事サービスを提供しています。

▼実際のメニュー

【メニュー例】

お寿司、サーモンの煮つけ、白和え、ひじき、苺入りヨーグルト

食事で不安を感じている方には、栄養士指導のもとで以下のような食事形態の提供も可能です。

  • きざみ食
  • ミキサー食
  • 糖尿病食
  • 腎臓病食
  • ゼリー食 など

また、高齢者が安全・安心して食事ができる環境整備に加え、「食の楽しみ」にも目を向けております。
月に1〜2回各館独自でバイキングや季節の食事イベントを開催し、飽きがこないような食事サービスも展開中です。

▼中華街をモチーフにしたイベントの様子

▼中華料理を召し上がるご様子

ご入居者のご希望や身体状況にあわせてサポートいたしますので、入居先をお探しの方は以下の施設一覧ページをぜひ一度ご覧ください。

サ高住における食事サービスの概要や食事費用の相場について知りたい方は、以下の記事もチェックしてみましょう。

【関連記事】サ高住は食事サービスもある?提供方法や食費の相場も解説|メニュー例も


まとめ:高齢者の食事は食べやすいメニューを中心に

高齢者にとって、食事は健康な生活を続けるうえで必要な活動の1つです。
加齢や疾患などの心身状況にあわせて、安全に食事ができるメニューや工夫が求められます。
高齢者の食事に関する希望や悩みを踏まえ、医師や栄養士などと連携しながら楽しく食事ができる環境を整えましょう。

弊社ゴールドエイジでは多数のサ高住を運営しており、管理栄養士が監修した豊富なメニューと安全管理に配慮した食事を提供しています。
入居相談やご見学も随時受付中なので、以下の一覧ページからお近くの施設をチェックしてみてください。

【関連記事】サ高住とは?費用・入居条件・サービス内容・問題点など基礎知識を解説
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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。