介護保険を申請すべきベストなタイミングとは?手続きの流れや注意点も解説
介護保険サービスを利用するためには、お住まいの自治体にて介護保険の申請をする必要があります。
しかし、介護保険サービスの申請タイミングに悩んでいる方や、申請で必要なものや流れがわからない方も多いでしょう。
この記事では、介護保険を申請するタイミングや手続き方法について解説します。
申請を行う際の注意点も紹介するので、介護保険の手続きを進めたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
【ケース別】介護保険を申請すべきベストなタイミング
介護保険を申請すべきベストなタイミングは、ご本人やご家族が介護サービスの必要性を感じたときです。
主なタイミングとして、2つの例があります。
- 骨折や病気で入院し退院後に介護が必要になる場合
- 在宅介護で負担や不安を感じる場合
それぞれについて解説します。
ケース①:入院している場合
入院中に介護保険の申請を行う場合は、退院する1〜2か月前が最適な申請タイミングです。
申請が早すぎてしまうと、手術直後や病状がまだ安定していない可能性があり、正確な認定調査が行えません。
逆に申請が遅すぎると、在宅に戻るときや施設入所するまでに審査結果が間に合わず、介護保険サービスが利用できない可能性もあります。
入院中の申請手続きや退院後の介護に関する悩みや不安があれば、医療機関の相談室に相談しましょう。
公的な介護相談窓口について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご参照ください。
【関連記事】介護の悩み相談ができる窓口一覧|負担軽減が期待できるサービスも解説
ケース②:在宅介護をしている場合
在宅介護時に申請を行うタイミングは、ご本人が日常生活でご家族など人の手が必要となったときです。
具体的には、以下のような状況があります。
- ご本人が身の回りのことができなくなった
- ご家族の介助を頼ることが多くなった
- 日中だけではなく、夜間も介助が必要になってきた
とくに、在宅介護で1番大変だと感じるのは、認知症状への対応です。
以下のような主な症状が出てきた場合は、早めに介護サービスの申請を考えましょう。
- 行動や物事自体を忘れてしまう
- トイレの失敗が増えた
- 「物を盗まれた」というようになった
- うつ症状がみられるようになった
在宅介護の場合、介護を行うご家族の負担がかなり強くなってしまいます。
ご家族が倒れてしまう前に介護保険の申請を行い、ご本人にあった介護サービスを受けることが必要です。
なお、弊社ゴールドエイジではご本人だけではなく、ご家族も在宅のように安心できる施設を運営しております。
在宅介護によるご家族の負担を減らしたいと考えている方は、一覧ページでお近くの施設をご覧ください。
また、在宅介護で大変なことや負担を軽減する方法については、以下の記事もあわせてチェックしましょう。
【関連記事】【家族だからこそ】在宅介護で大変なことランキング|負担の軽減方法も解説
介護保険の申請に関する基礎知識
介護保険の申請に関する基礎知識について、以下の2点を解説します。
- 申請対象者
- 申請時に必要なもの
申請を行う前にチェックし、スムーズに手続きできるようにしましょう。
申請できる人
介護保険に申請できる人は、第1号・第2号被保険者の2つに大別されます。
第1号被保険者とは、65歳以上の高齢者が対象です。
一方、第2号被保険者とは、40歳〜64歳までの医療保険加入者であり、特定疾病を抱えている方を指します。
特定疾病とは、以下の16症状です。
- がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
上記の特定疾病と診断され要介護認定を受けると、65歳未満の方であっても介護保険サービスを利用できます。
引用元:
必要なもの
介護保険申請に必要なものは、以下の5つです。
- 要支援・要介護認定申請書
- 介護保険被保険者証※
- マイナンバーが確認できるもの
- 申請者の身元確認書類
- 主治医情報が確認できるもの
※65歳以上の方の場合/40歳~64歳の方は健康保険被保険者証が必要
要支援・要介護認定申請書は、居住書がある市町村役所の介護保険課に置いています。
自治体によってはインターネットでダウンロードも可能なため、前もって記入しておきましょう。
また、要介護認定の審査においては、ご本人の病状や状態などが記載された主治医意見書の準備が必要です。
申請時に主治医がいない場合は、新たに医療機関に受診しなければならず、認定までに時間がかかります。
日頃から、病気や心身の状態を理解してくれるかかりつけ医を探しておきましょう。
【3ステップ】介護保険を申請する流れ
介護保険を申請する流れは、以下の3ステップです。
- 市町村へ要介護認定を申請する
- 訪問調査を受ける
- 一次・二次審査を経て要介護度が決定する
各ステップについて解説します。
ステップ①:市町村へ要介護認定を申請する
はじめに、お住まいの市町村役所にある介護保険課の窓口にて、要介護認定の申請をしましょう。
申請手続きは、原則ご本人やそのご家族で行います。
ただし、ご本人やご家族で申請が困難な場合は、以下の職員が代行可能です。
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 介護保険施設※
※施設入所中の場合に代行可能
自治体によってはご本人の委任状が必要な場合があるため、代理申請を希望するときは介護保険課に確認しましょう。
ステップ②:訪問調査を受ける
窓口への申請が終わると、対象者がいるご自宅もしくは入院・入所先で訪問調査が行われます。
訪問調査とは、介護認定調査員が項目に沿って必要な情報を対象者・ご家族に聞き取りを行うことです。
訪問調査で確認される主な項目は、下表のとおりです。
大項目 | 小項目 |
身体機能・起居動作 | ・麻痺や拘縮 ・寝返りや起き上がり ・座位や立位、立位保持 ・立ち上がりや歩行 ・洗身や爪切り ・視力・聴力 |
生活機能 | ・移乗・移動 ・食事や口腔状態 ・排泄 ・洗顔・整髪 ・衣類の着脱 ・外出頻度 |
認知機能 | ・意思の伝達 ・日課の理解 ・ご自身の生年月日や名前 ・今の季節や場所の理解 ・徘徊や行方不明の有無 |
精神・行動障害 | ・物盗られ妄想や妄言 ・感情的になる ・昼夜逆転 ・介護抵抗 ・帰宅願望の有無 ・収集癖 ・暴言・暴力 ・ひどい物忘れ ・独語 ・自分勝手に行動する ・会話の理解 |
社会生活への適応 | ・内服介助 ・金銭管理 ・意思決定 ・集団適応 ・買物や調理 |
特別な医療 | ・点滴や経管栄養 ・ストマや酸素の処置 など |
訪問調査では、ご本人の状態だけでなく、ご家族がどれほど介護に携わっているか、困ったことはないかを調査されます。
上記項目を前もって確認しておき、どの項目に困っているのかをあらかじめメモしておくと調査がスムーズに進むでしょう。
ステップ③:一次・二次判定を経て要介護度が決定する
訪問調査での聞き取り内容や主治医意見書を踏まえ、一次・二次判定が行われます。
一次判定とは、訪問調査の内容をもとにしたコンピューターによる自動判定です。
このとき、何の行為に何分以上介護が必要か、という要介護認定基準時間を算出します。
以下が、要介護度と基準時間の対応表です。
要支援・要介護度 | 要介護認定基準時間 |
要支援1 | 25分~32分未満 |
要支援2・要介護1 | 32分~50分未満 |
要介護2 | 50分~70分未満 |
要介護3 | 70分~90分未満 |
要介護4 | 90分~110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
自動判定にて要支援・要介護度が判定されたら、次に二次判定が行われます。
二次判定では、医療や福祉関係者で構成された介護認定審査会により、一次判定の結果や主治医意見書を踏まえた審査がされます。
要介護度の状態や利用できるサービスについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
【関連記事】【要介護度別】もらえるお金はある?介護にかかるお金や支援制度も解説
介護保険を申請する際の注意点
介護保険を申請する際には、2つの注意点があります。
- 申請後すぐにサービス利用できるわけではない
- 認定後も定期的な更新が必要になる
それぞれの注意点について解説しますので、申請する前に確認しましょう。
注意点①:すぐにサービスを利用できるわけではない
1つ目は、申請したらすぐにサービス利用できるわけではない点です。
介護保険申請後から結果通知までにかかる日数は、約30日です。
その後、介護支援専門員(ケアマネジャー)がサービス計画書(ケアプラン)を作成し、サービスを利用できます。
そのため、サービスを利用したい日から逆算して申請する必要があります。
ただし、ご本人の状態などにより急遽サービスが必要な場合は例外です。
ケアマネジャーに相談し、申請日からさかのぼって暫定ケアプランを作成するとサービスを利用できます。
その際、認定結果によっては以下の点に注意が必要です。
- 非該当(自立)となった場合、サービス費用は全額自己負担となる
- 想定した要支援・要介護度より低く出てしまった場合、差額分は全額自己負担となる
- 見込みの要介護度によっては、利用できるサービスが限られる
ご本人の心身状態を踏まえ、必要であれば申請時に介護保険課窓口に相談しましょう。
引用元:
注意点②:定期的な更新が必要になる
2つ目は、介護保険証は定期的な更新が必要である点です。
要介護認定を受けた場合、介護保険被保険者証には認定を受けた要介護度の有効期間が記載されています。
基本的な有効期間は6か月〜12か月ですが、状態に変化がなければ最長48か月となります。
有効期間の2か月前より更新申請が可能であり、万が一更新を忘れてしまうと介護給付費が支給されません。
とはいえ、更新が近くなるとケアマネジャーや入所施設担当者がアナウンスしてくれるため、忘れる可能性は低いでしょう。
さらに、有効期間内に体調や病状が急変してしまった場合、有効期間を待たずに更新も可能です。
その場合は、市町村役所の介護保険課で区分変更申請を行います。
よりご本人への介護が必要となり、サービスを多く利用したい方にとっても安心でしょう。
引用元:厚生労働省|要介護認定に係る法令 9.要介護認定の有効期間について
まとめ:介護保険を申請すべきタイミングに決まりはない
介護保険を申請すべきタイミングに、明確な基準や決まりはありません。
ご本人の状態やご家族の負担を考慮し、介護サービスを利用したいと思ったときに申請しましょう。
なお、弊社ゴールドエイジでは、介護保険サービスに関するご利用・ご相談も承っております。
利用者さまの中には、入院中に介護保険の申請手続きを進め、認定を受けてから入居する方もいらっしゃいます。
在宅介護中の方はもちろん、入院中で新しい生活の場を探している方は、ぜひ一覧ページでお近くの施設をご覧ください。
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この記事の監修
間井 さゆり
役職 | 内部監査室長 |
保有資格 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) |
2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。