要介護5でもらえるお金はある?要介護4との違いや利用できるサービスも

要介護5は要介護度の中でも、もっとも介護が必要な状態ですが、制度をうまく活用すればサービス利用の負担を減らすことが可能です。
しかし、要介護5と認定されると、具体的にどのような支援があるのかわからず、不安な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、要介護5でもらえるお金の有無や、サービス利用の負担を軽くできる制度を解説します。
具体的に利用できるサービス内容や、要介護度4との違いについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
要介護5でもらえるお金はある?

要介護5で現金を直接もらえる制度はありません。
しかし、以下に挙げる6つのように、サービス利用時の金銭負担を軽くする制度があります。
- 区分支給限度額
- 高額サービス費制度
- 紙おむつの支給や購入費用の助成
- 福祉用具のレンタル・購入にかかる費用の給付
- リフォーム工事への補助金
- 障害者控除
各制度の内容や、支援の金額について紹介します。
他の要介護度で受けられる支援について知りたい方は、以下の記事も参考にしましょう。
【関連記事】【要介護度別】もらえるお金はある?介護にかかるお金や支援制度も解説
制度①:区分支給限度額
区分支給限度額とは介護保険サービスを利用した場合、要介護度に合わせて支給される給付金の上限です。
介護保険サービスの費用は、所得に応じて1〜3割が自己負担ですが、残りの費用は介護保険から支給されます。
要介護5の区分支給限度額と自己負担額は、下表のとおりです。
金額 | ||
区分支給限度額 | 36万円2,170円 | |
所得に応じた利用者負担額 | 1割 | 3万6,217円 |
2割 | 7万2,4134円 | |
3割 | 10万8,651円 |
利用した介護保険サービス費用の合計が区分支給限度額の範囲内であれば、介護保険から支給が受けられます。
しかし、1円でも限度額を超えると残り費用は全て自己負担が必要です。
また、区分支給限度額が適用されるのは、通所リハビリや訪問看護などの居宅サービスや地域密着サービスで、施設入所サービスには適用されません。
要介護5は区分支給限度額が、ほかの要介護度にくらべると多いため、多様な介護保険サービスを組み合わせることが可能です。
ケアマネジャーに助言を受けながら、在宅生活を継続するために適切なサービスを組み合わせましょう。
制度②:高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度は、介護保険サービスにおける1か月の自己負担額が限度額を超えた場合、超過分の金額が払い戻される制度です。
高額介護サービス費制度は居宅サービスだけではなく、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの施設サービス費にも適用されます。
高額介護サービス費制度を利用するためには、自治体への申請が必要です。
介護保険サービスの自己負担が限度額を超えた場合、自治体から申請書が送付されるので、忘れずに手続きしましょう。
要介護5では居宅サービスを複数組み合わせたり、介護施設の利用が必要になったりするため、自己負担となる金額も多くなりがちです。
ご本人やご家族がお互い負担のない生活を送るために、高額介護サービス制度を活用しましょう。
制度③:紙おむつの支給や購入費用の助成
要介護5は寝たきりの方が多く、自力での排泄が難しいケースがほとんどです。
紙おむつやパッドの使用が必要になるため、購入費用の負担が大きくなります。
そこで、自治体ごとに紙おむつや尿とりパッドなどを支給する、あるいは購入費用を助成する制度を作っています。
負担してくれる限度額は自治体によって異なるので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
制度④:福祉用具のレンタル・購入にかかる費用の給付
福祉用具のレンタルにかかる費用は、自己負担が1〜3割で、残りは介護保険による給付が受けられます。
要介護5の場合、介護保険でレンタルできる福祉用具は、以下のとおりです。
- 車いす
- 車いす付属品
- 特殊寝台
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト(つり具部分を除く)
- 自動排泄処理装置(排便機能のないもの)
また、福祉用具を購入する場合に、介護保険による給付が受けられる用品(特定福祉用具)があります。
具体的な福祉用具の種類は、以下のとおりです。
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部分
- 排泄予測支援機器
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具部分
なお、特定福祉用具に対する給付は、10万円が限度です。
寝たきりの状態も少なくない要介護5で在宅生活を続けるためには、さまざまな福祉用具の活用が必要です。
介護保険を活用したレンタルや補助による購入が可能な福祉用具を利用して、介護にかかる負担を少しでも軽減できるようにしましょう。
引用元:
制度⑤:リフォーム工事への補助金
介護のために住宅をリフォームする場合、介護保険による補助が受けられます。
20万円を上限とし、1〜3割の自己負担で住宅改修が可能になります。
つまり、20万円の工事をした場合、1割の2万円を自己負担するため、支給される補助金は最大18万円です。
補助金を利用するための要件は、以下のとおりです。
- 住宅改修をする方が要支援や要介護の認定を受けている
- 改修をする住宅が利用者の被保険者証に記された住所と同じで、実際に居住している
- 利用者が入院したり、福祉施設に入所したりしていない
なお、20万円の枠は分割で活用可能です。
また、以下の場合は20万円の上限が復活します。
- 引っ越した場合
- 要介護区分が3段階以上あがった場合
要介護5で在宅生活する場合、バリアフリーになっていない住宅では、介護の負担は大きくなってしまいます。
少しでもご本人・ご家族に負担の少ない生活を送るため、補助金を活用したリフォームを検討しましょう。
制度⑥:障害者控除
障害者控除は、障害者手帳を持っている方が、所得から一定の控除を受けられる制度です。
介護保険を利用している方も手帳を保有していれば、障害者控除を受けられます。
また、障害者手帳を持っていない場合でも、以下の要件を満たせば障害者控除の対象となります。
- 65歳以上の寝たきりや認知症などの方
- 障害の程度が知的障害者などに準ずる者として市町村長等の認定を受けた方
対象者別の控除額は、下表のとおりです。
対象者 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
要介護5では、すべての動作に介助が必要になり、認知症の程度が重度の場合も少なくありません。
障害者控除を活用できれば、金銭的な余裕につながるため、積極的に活用しましょう。
引用元:国税庁|障害者控除
要介護5とは

要介護状態とは病気や障害により、日常生活における動作の全部または一部に何らかの介助が必要になった状態です。
介護が必要な時間や程度によって、要介護1〜5の5つの区分に分けられます。
ここでは要介護5に関する知識として、以下の2点を解説します。
- 基本的な状態
- 要介護4の違い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
基本的な状態
要介護5は要介護区分の中でも、介護の必要性がもっとも高い状態です。
具体的な状態像は、以下のとおりです。
- 日常生活全般で介助が必要になる
- 食べ物や飲み物を飲み込むのが難しい
- 理解力や思考力が低下して、徘徊などの問題行動が出現する
- 発語や理解が困難で、コミュニケーションが取れない
- 1日のほとんどを横になって過ごす など
要介護5では自力で立ったり歩いたりできず、寝たきりのままである場合も少なくありません。
認知症の進行により理解力や思考力が低下して、徘徊や暴言などの問題行動が見られる場合もあります。
意思疎通ができずコミュニケーションが取れない点も、介護度が重くなる要因です。
生活全般に介護が必要になるため、自宅での生活が難しく、施設入所の検討が必要な状態といえるでしょう。
なお、弊社ゴールドエイジには重度介護が必要な方が入居できる施設があります。
入所施設をお探しの方は、施設一覧ページをご覧ください。
要介護4との違い
要介護4と要介護5の違いは、下表のとおりです。
違い | 要介護4 | 要介護5 | |
日常生活動作 | 食事 | 一部介助が必要 | すべて介助が必要 |
ベッド上の動作(寝返りや手足の動き) | 介助は必要だが一部自力で可能 | すべて介助が必要 | |
排泄 | ・おむつを使用してベッド上で交換 ・尿とりパッドや簡易トイレ使用 | おむつを使用してベッド上で交換 | |
意思疎通 | 部分的に可能 | 不可能 | |
要介護認定等基準時間 | 90分以上110分未満 | 110分以上 | |
認定者数(割合) | 男女計 | 89万1,893人(12.6%) | 58万9,558人(8.3%) |
要介護5は、ほぼ寝たきりで意思疎通が難しく、全面的な介助が必要な状態です。
一方、要介護4は介助が必要ですが、一部の動作は自力で可能です。
意思疎通もまったくできないわけではありません。
要介護4、5では生活の多くで介護が必要な点は変わりませんが、介護の負担は大きく異なることを知っておきましょう。
要介護4の基礎知識を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】要介護4でもらえるお金はある?利用できるサービスや入所先の選択肢も解説
引用元:厚生労働省|令和6年2月介護保険事業状況報告(暫定)
要介護5で利用できるサービス一覧

要介護5で利用できるサービスは、下表のとおりです。
入所サービス | ・介護老人保健施設(老健) ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 ・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど) ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ・地域密着型特定施設入居者生活介護 | |
通所サービス | ・通所介護(デイサービス)★ ・通所リハビリ(デイケア)★ ・地域密着型通所介護 ・療養通所介護 ・認知症対応型通所介護 | |
訪問サービス | ・訪問介護★ ・訪問看護★ ・訪問リハビリ★ ・訪問入浴★ ・夜間対応型訪問介護★ ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ★ | |
その他のサービス | ケアプラン作成のサービス | ・居宅介護支援 |
短期間の入所サービス | ・短期入所生活介護(ショートステイ)★ ・短期入所療養介護★ | |
訪問・通所・入所を組み合わせたサービス | ・小規模多機能型居宅介護★ ・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)★ | |
介護用品をレンタル・購入するサービス | ・福祉用具貸与★ ・特定福祉用具販売 |
要介護5では、すべての介護保険サービスが利用できますが、状態の重度化にともない施設へ入所するケースが多くなります。
とくに特別養護老人ホームは入所にかかる費用が少なく、終の住処としてスタンダードな選択肢の1つです。
特別養護老人ホームについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いとは?類似施設との比較も解説
まとめ:要介護5でもらえるお金はないが制度でカバーされる

要介護5は要介護認定の中でも、もっとも重度の状態であり、介護にかかる費用がかさみがちです。
現金が直接給付される制度はありませんが、費用負担を減らせる制度は複数あります。
制度の利用には条件があるので、よく確認したうえで積極的に活用しましょう。
また、要介護5になると自宅での生活は厳しくなり、施設入所を検討する場合も少なくありません。
弊社ゴールドエイジでは、要介護状態で利用できる施設が多数あります。
入所施設を探している方は、以下の一覧ページをご覧ください。
【関連記事】【家族だからこそ】在宅介護で大変なことランキング|負担の軽減方法も解説
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この記事の監修

間井 さゆり
役職 | 内部監査室長 |
保有資格 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) |
2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。