緩和ケアは生存期間(余命)を延長させる?国内外の研究結果をもとに解説

緩和ケアは、病気によって引き起こされる心身の苦痛を和らげ、生活の質を向上させるための支援です。
現在は、病気の発症早期から提供するケアとなっており、その効果は生存期間(余命)にもおよぶと考えられています。
しかし、「緩和ケアは本当に、生存期間を延ばすのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、早期の緩和ケアが生存期間を延長させると考えられる理由や、研究に基づく考察を解説します。
近年における緩和ケアの考え方や受けられる場所も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
近年における緩和ケアの考え方

医療の進歩とともに、緩和ケアの考え方も変化してきました。
従来の「終末期医療」というイメージから、より包括的なアプローチへ移行しています。
そこで、近年における緩和ケアの考え方について、以下の2点から解説します。
- 導入時期
- ケアの内容
なお、緩和ケアで患者側が知っておきたい内容や、大切にしたいことを知りたい方は、下記の記事をチェックしてください。
【関連記事】緩和ケアと言われたら「余命わずか」は誤解|支援内容やサポート体制を解説
導入時期
近年、緩和ケアは、病気の診断時や治療開始などの早い時期に導入することが重要と考えられています。
医療の発達による病気の早期発見と、治療法の選択肢が拡大したためです。
たとえば、がん治療には苦痛を伴う場合もあり、緩和ケアがなければ体力が消耗して気力が続かない恐れも出てくるでしょう。
緩和ケアの適切な症状管理は患者の体力を維持できるため、導入時期の判断は重要な意味を持っています。
また、早期の緩和ケア導入は、患者とそのご家族が今後の治療や生活について考える時間的余裕を生み出します。
この時間的余裕を活かして考えておきたいのが、人生の最終段階に向けた希望を共有する取り組みとなる、アドバンス・ケア・プランニングです。
アドバンス・ケア・プランニングを始めるタイミングや、進め方を詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?定義や目的・進め方を解説
ケアの内容
緩和ケアは、患者の多様なニーズに適応するため、基本的緩和ケアと専門的緩和ケアの2種類に区分されています。
それぞれの違いは、下表のとおりです。
基本的緩和ケア | 専門的緩和ケア | |||||
提供者 | 医師や看護師など、担当するすべての医療従事者 | ・緩和ケアの専門医 ・緩和ケアの専門看護師 ・薬剤師 ・公認心理師 など | ||||
提供場所 | ・一般病棟 ・一般外来 ・在宅医療 など | ・緩和ケア専門病棟 ・緩和ケア外来 ・在宅医療 など | ||||
ケアの内容 | ・不安に対する傾聴や支援 ・痛みに対する薬剤の処方 ・日常生活支援 など | 基本的緩和ケア内容に加えて以下を提供 ・緩和困難な痛みや精神症状への対処 ・専門的視点による口腔ケアや栄養管理の実施 など |
基本的・専門的緩和ケアの両者ともに、患者の苦痛緩和と生活の質向上を目指した支援です。
専門的緩和ケアは、基本的緩和ケアで対応しきれない複雑な症状や心理的問題に対し、専門家によるチームで取り組みます。
施設によっては表に記載した職種以外にも、ソーシャルワーカーや宗教家など多様な専門家が連携し、より高度なケアを提供します。
早期の緩和ケアは生存期間を延長させる?

早期の緩和ケアは、生存期間の延長につながる可能性が期待されています。
主な理由は、以下のとおりです。
- 緩和ケアで苦痛を伴う症状が改善し、治療を進められる
- ストレスが軽減し、心身機能の良好な状態が保持できる
- 苦痛が緩和されることで食欲がアップし、栄養状態の改善と体力向上が図れる
たとえば、がん患者の場合、強い痛みがあると食欲が低下して日常生活も制限されます。
しかし、緩和ケアによって痛みが適切にコントロールされれば、食欲アップや睡眠時間の延長につながります。
その結果、日々のストレスが軽減し、生存期間によい影響を与えるでしょう。
ただし、緩和ケアが必ず生存期間を延長するとは断定できません。
理由については、次項の「がん患者の緩和ケアと生存期間に関する研究結果」で解説します。
がん患者の緩和ケアと生存期間に関する研究結果

がん患者の緩和ケアと生存期間の影響について、以下に挙げる2つの視点から解説します。
- アメリカの研究結果
- 日本国内の研究結果
それぞれ詳しく見ていきましょう。
アメリカの研究結果
以下は、2010年にアメリカで発表された緩和ケアの研究結果です。
研究内容 | ・転移を伴う非小細胞肺がんの患者を、「標準ケアのみ」か「標準ケア+緩和ケア」のグループに区分 ・生活の質や治療選択などを評価し、緩和ケアの早期導入により、生存期間が延長する可能性を検討 | ||||||||||||||||||
結果 | ・早期から緩和ケアを受けていた患者は抑うつが少なく、生活の質が高い ・緩和ケアを受けた患者は、終末期に積極的な治療を受ける割合が低い |
上記の結果は、緩和ケアが精神症状や生活の質によい影響を与えていると示しています。
ただし、生存期間の延長は、患者が病状への理解を深め終末期に無理な治療を受けなかったことも要因として考えられます。
そのため、緩和ケアのみで生存期間が延長したとは断定できません。
緩和ケアは、病状に対する知識と理解を深め、ご自身に合った治療法を選択するための一助となり得ます。
結果として、生活の質向上だけでなく、生存期間の延長につながったといえるでしょう。
引用元:
- オンコロジーナースVol.7 No.5|早期からの緩和ケアは生存期間を延長する可能性がある
- National Library of Medicine|Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer
日本国内の研究結果
日本でも緩和ケアと生存期間に関する研究が発表されています。
以下は、2023年に筑波大学が発表した緩和ケアの研究結果です。
研究内容 | 緩和ケア病棟と、自宅で緩和ケアを受けた進行がん患者の生存期間を比較 | ||
結果 | 自宅で治療や緩和ケアを受けた患者の生存期間は長い |
上記の研究結果は、自宅の生存期間の方が長いとなっていますが、解釈には注意が必要です。
具体的な緩和ケアの内容や、生存期間への影響などは詳しく調査されていません。
また、患者の全身状態や社会的背景も考慮する必要があるため、単純に「自宅で緩和ケアを受けた方が長生きできる」と結論づけるのは困難です。
しかし、この結果は「自宅での緩和ケアは医療の目が少なく、生存期間が短くなるのではないか」と不安を感じる患者・家族・医師への説明に活用できます。
緩和ケアの場所を選択する際の意思決定支援に、役立てられる内容といえるでしょう。
引用元:TSUKUBA JOURNAL|進行がん患者が過ごす場所は生存期間にほとんど影響しない
緩和ケアを受けられる主な場所

緩和ケアを受けられる主な場所は、以下のとおりです。
- 病院
- 自宅
- 緩和ケア専門病棟
- ホスピスケアを提供している施設
がんなどの治療をしている一般病院でも、緩和ケアを受けられます。
病院によってケアの内容は異なりますが、医師や看護師などがチームを組み、患者の痛みや不安を和らげるために支援します。
もちろん、住み慣れた自宅でご家族と過ごしながら、訪問による診療や看護を受けることも可能です。
ただし、自宅では、介護するご家族の負担増加や緊急時対応への不安といった問題に直面することもあるでしょう。
そのような不安のある方には、緩和ケアを受けられる施設がおすすめです。
なお、緩和ケアとホスピスの対象者やケアの内容を詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
【関連記事】緩和ケア・ホスピスケアの違いと共通点を解説|対象者・費用・提供場所など
引用元:日本緩和医療学会|緩和ケア.net 緩和ケアはどこで受けられる?
緩和ケアを受けながら自分らしい生活を続けたい方は

緩和ケアを受けながら自分らしい生活を続けたい方には、ゴールドエイジがおすすめです。
弊社ゴールドエイジは、幅広い年齢層や緊急時対応が必要な方でも入居でき、安心して生活できる空間を提供しています。
安全面に配慮された環境で、病状観察や療養生活の管理など、多様なケアを受けながら日常の暮らしを送ることが可能です。
緩和ケアは、基本的にゴールドエイジ全館で対応できますが、入居者様の状態や必要なケアによって入居可能な施設が限定される場合がございます。
詳細につきましては、一度お問い合わせください。
また、お近くの施設をお探しの方は、施設一覧ページもチェックしましょう。
まとめ:緩和ケアは生存期間を延長させる可能性が示唆されている

緩和ケアは、患者の苦痛を軽減し、生活の質を向上させるうえで重要な役割を果たします。
適切なケアの提供は、生存期間を延長させる可能性も示唆されています。
しかし、ご自身やご家族にとって最適な環境を見つけるのは、容易ではありません。
弊社ゴールドエイジでは、このように緩和ケアを必要とする方が入居できる施設を運営しております。
基本的に全館で緩和ケアに対応しておりますが、状態によっては入居できる施設が限られる可能性もあるため、まずは一度お問い合わせください。
緩和ケアを受けながら安心して生活したい方は、施設一覧ページでお近くの施設をチェックしましょう。
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この記事の監修

間井 さゆり
役職 | 内部監査室長 |
保有資格 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) |
2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。