特養の利用で自己負担となる費用とは?経済的負担を軽くする制度も解説
特別養護老人ホーム(特養)の利用料には、介護保険が適用される費用と自己負担となる費用があります。
特養の入居を検討している方にとって、費用の内訳や自己負担の割合などは気になる項目でしょう。
この記事では、特養で自己負担となる費用の項目や金額を具体的に解説します。
経済的負担を軽くする制度も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
特養(特別養護老人ホーム)とは
特養とは原則、要介護3以上の方が入居できる介護施設です。
特養では以下のような介護サービスが、介護福祉士などの資格を持つ職員によって24時間体制で提供されます。
- 食事や排泄介助
- 入浴介助や口腔ケア
- ご本人の状態に応じた機能訓練 など
なお、特養は、ご本人が亡くなるまで介護サービスや施設設備を利用できます。
このように特養は、介護を必要とする方やそのご家族が安心して地域で生活していくために役立つ介護施設です。
特養と同様に要介護3以上の方が利用できる介護サービスを知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【関連記事】要介護3でもらえるお金はある?状態像や利用できるサービス一覧も紹介
【居室タイプ別】特養の利用にかかる費用
特養の利用にかかる費用は、以下のとおりです。
- 介護サービス費
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
また、特養には4つの居室タイプがあり、下表のようにかかる費用は異なります。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
従来型個室 | 10万6,150円 | 10万8,250円 | 11万440円 | 11万2,540円 | 11万4,610円 |
多床室 | 9万6,670円 | 9万8,770円 | 10万960円 | 10万3,060円 | 10万5,130円 |
ユニット型個室 | 13万3,630円 | 13万5,730円 | 13万7,980円 | 14万110円 | 14万2,180円 |
ユニット型個室的多床室 | 12万3,490円 | 12万5,590円 | 12万7,840円 | 12万9,970円 | 13万2,040円 |
要介護度が高くなるにつれて、費用負担が増加する点にご注意ください。
すでに施設入所を決めているという方は、この機会にサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームへの入居も検討してみてはいかがでしょうか。
弊社ゴールドエイジが運営する入居施設では、自立の方から要介護5の方まで幅広い方を対象としています。
特養に比べて比較的待機時間も短いため、できるだけ早く入居したいという方にもおすすめです。
詳しい情報を知りたい方は、下記の施設一覧ページをぜひご覧ください。
特養の利用で自己負担となる費用
特養の利用で自己負担となる費用は、以下の3つです。
- 介護サービス費
- 居住費
- 食費
それぞれの意味や費用の目安を解説します。
費用①:介護サービス費
介護サービス費とは、特養で受けられる支援に対して支払う料金です。
介護サービス費には介護保険が適用されるため、自己負担となる費用はサービス費の1割となります。
ただし、一定以上の所得がある場合は、2割または3割負担となります。
下表は、要介護度と居室タイプ別にみた介護サービス費用です(利用者負担1割で算出)。
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護3 | 712円 | 712円 | 793円 | 793円 |
要介護4 | 780円 | 780円 | 862円 | 862円 |
要介護5 | 847円 | 847円 | 929円 | 929円 |
居室タイプや要介護度によって費用が変動する点にご注意ください。
費用②:居住費
居住費は、居室の使用にかかる料金です。
介護保険の給付対象外となるため、基本的に全額自己負担となります。
ただし、居住費と後述する食費に関しては、厚生労働省が定める基準費用額(※)が設けられています。
※介護施設における食費と居住費の平均的な費用を勘案して定められた金額
基準費用額が定められていることで、特養の入居者は適正な料金で利用可能です。
実際、厚生労働省によると、特養の多床室における基準費用額は月額で2万5,992円です。
日額に換算すると、855円となります。
なお、特養における居住費の基準費用額は、2024年8月から1日あたり60円値上げされることが決定されています。
入居を検討する際は、最新の基準費用月額を確認しましょう。
引用元:
費用③:食費
食費は、1日3回の食事にかかる食材費や調理費用です。
居住費と同様に原則、介護保険の給付対象外となるサービスです。
特養における食費の金額は、2024年6月時点で1日あたり1,445円となります。
ひと月に30日利用したと仮定すると、4万3,350円です。
なお、特養の食費は1日ごとの請求となります。
そのため、入院や外泊などで食事が不要の際は、事前に施設に申し出て食事をとめておきましょう。
特養で自己負担となる費用の減免制度
減免制度とは、本来かかる負担の一部または全部を免除する制度のことです。
特養の自己負担となる費用に対して、5つの減免制度を利用できます。
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
- 高額介護サービス費
- 利用者負担軽減制度
- 高額医療・高額介護合算療養費制度
- 各種控除
各制度の具体的な内容をみていきましょう。
制度①:特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
特定入所者介護サービス費とは、食費・居住費の自己負担に上限を設けて、入居者の費用負担を軽減する制度です。
同制度を利用することで、対象者が負担するのは法律で定められた負担限度額までとなります。
たとえば、生活保護を受給している方が従来型個室を利用した場合、1日あたりの負担限度額は居住費が490円、食費は300円です。
特定入所者介護サービス費の対象者は、所得や資産が一定額以下の方です。
所得段階や部屋のタイプによって上限額が異なるため、制度を利用する際は、ご自身がどの区分に該当するか注意してみましょう。
特定入所者介護サービス費の対象者や具体的な上限額について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】【早見表付き】特別養護老人ホームの費用を居室タイプ別に解説!軽減方法も
制度②:高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、1か月あたりの自己負担額が限度額を超えた場合に、超過分の金額が払い戻される制度です。
特養の場合は、介護サービス費が対象となります。
特養の居住費、食費、日常生活費は、高額介護サービス費の対象外となる点にご注意ください。
高額介護サービス費の対象者は、1か月に支払った自己負担の合計金額が、負担限度額を超えた方です。
負担限度額は、所得に応じて区分が分かれています。
主な負担上限額の例は、以下のとおりです。
- 生活保護を受給している方は1万5,000円
- 世帯全員が市町村民税非課税の場合は、2万4,600円
- 2万4,600円は世帯の負担上限額
金銭的負担の大きさを感じる場合は、高額介護サービス費が適用有無を確認しましょう。
高額介護サービス費の対象者や負担上限額について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】高額介護サービス費は特養でも適用される?計算方法や申請手順を解説
制度③:利用者負担軽減制度
利用者負担軽減制度とは、介護保険サービスを提供する社会福祉法人や自治体が主体となり、入居者の利用者負担額を軽減する制度です。
利用者負担軽減制度には、前提となる2つの申請要件があります。
- 市町村民税世帯非課税
- 生活保護受給者
さらに、以下の要件を全て満たしたうえで「生計が困難な者」として市町村に認められる必要があります。
- 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下
- 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下で
- 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がない
- 負担能力のある親族等に扶養されていない
- 介護保険料を滞納していない
利用者負担軽減制度の軽減割合は、利用者負担額の4分の1です。
老齢福祉年金受給者は、利用者負担額の2分の1が軽減されます。
利用者負担額の内訳は、以下のとおりです。
- 介護サービス費の自己負担分
- 食費
- 居住費
利用者負担軽減制度には複数の申請要件があるため、申請の際は抜け漏れがないよう注意しましょう。
制度④:高額医療・高額介護合算療養費制度
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険の自己負担額が著しく高額になった方が利用できる制度です。
したがって、対象者は医療保険と介護保険の両方で自己負担額が発生している世帯となります。
高額医療・高額介護合算療養費制度の対象期間は、8月1日から翌年7月31日までです。
対象期間中に、医療保険と介護保険に支払った自己負担額の合計が基準額を超えた場合に、超過分が支給される仕組みです。
支給を受けたい方は、お住まいの市区町村市役所への申請をしましょう。
制度⑤:各種控除
特養における自己負担費用の軽減に役立つ制度として、医療費控除と扶養控除が挙げられます。
医療費控除の対象は、以下のとおりです。
- 介護サービス費
- 居住費
- 食費
支払った金額の2分の1相当額が医療費控除の対象となります。
ただし、世帯分離を行い生計を別にしている場合は、医療費控除の対象外となるため注意しましょう。
また、特養に入居している家族が扶養親族の場合、扶養控除を利用して税金負担を軽減することが可能です。
なお、医療費控除や扶養控除を受けるためには、お住まいの市役所に申請する必要があります。
申請期間を過ぎないようご注意ください。
まとめ:特養は自己負担の費用が比較的少ない
特養の利用料は毎月発生します。
事前に、自己負担となる費用の項目や金額を把握しておくと支払いの際にあわてずに済みます。
費用負担を軽減する制度は複数存在しているため、各制度の支給要件などに注意して、利用できる制度がないか探してみてください。
特養を上手に利用して、ご本人やご家族が安心できる暮らしを実現させましょう。
なお、弊社ゴールドエイジでは、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームを運営しております。
特養に比べて、待機時間が短いほか生活の自由度が高いといった特徴があり、施設入所を検討している方のニーズに応えています。
介護施設を探している方は、施設一覧ページをぜひご覧ください。
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この記事の監修
間井 さゆり
役職 | 内部監査室長 |
保有資格 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) |
2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。