『生き残る病院、淘汰される病院』 川目正良著(株)すばる舎発売

ぜひお読みください。

私などは介護、看護、医療の新参者ですので、今まで訳も分からずに厚生労働省の現在の医療と福祉の社会保障に疑問をぶつけてきました。しかしこの著書を読んで「目からうろこ」ですね。
現在の日本は世界トップの高齢化率を達成して成熟期を終えてしまいました。「揺り籠から墓場まで」の「手厚い社会保障」は戦後ずっと厚労省の努力で実現されてきたのですが、この少子高齢化の人口の変化には誰もどうすることもできないと言うのが正直な話しです。
厚労省も1985年の第1次医療法改正から、2006年の第5次医療法改正まで、できる限りの努力をしています。
しかし2008年、「後期高齢者医療制度」が75才以上に適用されることになり、現役世代並の所得のある後期高齢者は「3割負担」となってしまいました。又70才から74才の高齢者も2009年4月から「2割負担」に引き上げられます。
新聞やテレビでもこの国の方針と厚労省の行政に非難が集中しましたね。
テレビではみのもんた口調で「ほっとけない!!」「責任者出て来い!!」とさんざん厚労省の医療制度は批判されていました。
と言う事で以前の私であれば、厚労省のやり方を一緒になって批判したかもしれませんが、今は少しばかり介護、看護、医療に関わって仕事をしてみて、考え方と見る目が全く変わってしまったところです。
一言で言って、国に予算がなくてもうこれ以上はやりたくてもやれないんだ!!と言うこと。ですから『後期高齢者医療も私は賛成。』するしかありません……。
理由を2つ申し上げますと。第①に皆さんはご存知でしょうか?県立、市立などの自治体病院の90%以上が赤字経営です。日本赤十字病院などの国の公的病院も60%が赤字です。民間病院はなんと半数の2件に1件の病院が赤字経営に苦しんでいるのが日本の現状なんですね。
高齢者も病人も苦しいのですが、病院はもっと苦しいかもしれませんね。これ以上は病院に要求しても病院も赤字ですから「やりたくても、できない。」のが現状でしょう。
第②にやはり日本の人口の現実をつきつけられると恐ろしい限りです。
戦後生まれの団塊の世代の800万人が2007年以後に続々と現役を引退しています。毎年100万人以上の高齢者が世の中にあふれ出てくるのですね。
しかし一番恐いのは、15才から64才の『生産年齢人口』が急激に減少することです。1995年の8700万人から、2005年8400万人、2025年7000万人、2055年4200万人です。そして2055年には高齢者は3800万人もいますね。
15才以上の一人の労働者で、一人の高齢者を支える「恐怖の日本の超高齢社会の誕生」です。はたしてその様な社会が国家として存続できるのかが問われていますし、世界中から注目されて、日本は観察されて、実験材料にされている訳ですね。「手厚い社会保障」はもう期待できないのです。
「病院倒産」や「医療崩壊」や「介護崩壊」が新聞や雑誌で特集記事が組まれて叫ばれていますが、しかしそんな中で厚労省はたくさんの政策を実行しています。
その中の1つが、医療法人にも経営ができるようになった「有料老人ホーム」や「高専賃住宅」の経営です。この介護付住宅の「ゴールドエイジ」が厚労省の行政の方針に従って日本中に建設されれば、日本の医療・看護・介護が劇的に改善され、変革されると私は信じています。
そしてそれが日本の社会を救う一助になればと考えています。