親を施設に入れるタイミングや費用相場を解説!手順や拒否時の説得方法も
在宅介護の負担が大きくなってくると、「うちの親、そろそろ施設に入所したほうがよいのかも」と考える方もいるでしょう。
しかし、施設入所の決断を迫られたとき、「具体的にどのような手順で進めればよいか、わからない」という方も少なくありません。
この記事では、親の施設入所を検討するタイミングや入所するまでの流れについて解説します。
親が施設入所を拒否した場合の説得方法や、よくある質問と回答についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
親の施設入所を検討するタイミング
親の施設入所を検討すべきタイミングは、介護者の身体的・精神的負担が強くなったときです。
たとえば、日中・夜間問わず、排泄介助や認知症による周辺症状が出てくると、ご家族は24時間体制で介護にあたる必要が出てきます。
介護する側もされる側も負担が大きいと、最悪の場合、共倒れしてしまうケースも少なくありません。
在宅介護が難しいと感じたときにはご本人とご家族、双方のためにも施設入所を検討しましょう。
在宅介護で大変な部分や負担の軽減方法について知りたい方は、以下の関連記事をご参照ください。
【関連記事】【家族だからこそ】在宅介護で大変なことランキング|負担の軽減方法も解説
施設入所と在宅介護のメリット・デメリットを比較
施設入所と在宅介護のメリット・デメリットは、下表のとおりです。
施設入所 | 在宅介護 | |
メリット | ・ご家族の介護負担が軽減される ・専門家による適切なケアが常時受けられる ・ご本人が同居者や介護職員などとコミュニケーションが取れる | ・住み慣れた自宅で介護を受けられる ・ご本人の生活サイクルや環境に合わせた介護サービスを調整できる ・ご家族が近くにいることで安心できる |
デメリット | ・在宅介護よりも費用がかかる ・施設に馴染めない可能性がある ・個室があっても集団生活が必要な場合がある | ・介護者の身体的・精神的負担がかかる ・介護離職をせざるを得ない場合がある ・介護者が不在の場合、緊急時対応が遅くなる可能性がある |
施設入所の場合、大きなメリットはご家族の介護負担が減ることです。
さらに、ケアやリハビリのプロによる支援を受けられるため、生活の質の向上につながります。
デメリットは、在宅介護より費用がかかることです。
実際、全国の実態調査によると介護費用の平均は在宅で4.8万円、施設では12万円となっています。
一方、在宅介護のメリットは、住み慣れた地域や環境で支援できる分、ご本人も安心して生活を続けられる点です。
ただし、介護が必要な場面が多くなるとご家族の負担が大きくなり、働いている方は離職を検討するケースもあります。
ご本人の状況や介護する環境を踏まえ、在宅介護か施設入所かを検討しましょう。
引用元:公益財団法人生命保険文化センター|2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査 P.202
親を施設に入れる際にかかる費用
親の入所費用は、施設形態によって違いがあります。
施設形態 | 初期費用 | 月額利用料 |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5万円~20万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 9万円~15万円 |
介護付き有料老人ホーム | 60万円~700万円 | 20万円~30万円 |
グループホーム | 15万円 | 14万円~15万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 15万円~25万円 | 13万円~22万円 |
特養や老健といった公的介護保険施設の場合、初期費用はなく安く利用できます。実際、弊社で運営するサービス付き高齢者向け住宅では、月額費用が16万円台の方が一番多くなっています。
ただし、待機期間が長くなったり希望する施設に入れなかったりするため、注意が必要です。
有料老人ホームやグループホーム、サ高住といった民間施設の場合、比較的生活の自由度が高い傾向にあります。
一方で、立地や設備の充実さによって大きく値段が異なるため、希望する施設が見つかったら費用を確認しておきましょう。
【3ステップ】親が施設に入所するまでの流れ
施設に入所するまでの流れは、以下の3ステップです。
- 親やご家族と話し合う
- 入所先を探す
- 見学や体験利用を経て入所先を決める
上記ステップに沿って、入所するご本人やご家族が安心できる施設を探していきましょう。
ステップ①:親やご家族と話し合う
まずはご本人も含め、ご家族全員で自宅での現状や施設入所を検討している旨を話し合いましょう。
話し合いのときに押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
- どのような環境で介護を受けたいか
- 誰に介護してもらいたいか(ご家族・専門スタッフなど)
- 延命治療の希望はあるか
ただし、ご本人が施設入所に難色を示し、拒否する可能性も大いに考えられます。
入所を嫌がったり拒否したりした場合の対処法は、後述する「親が施設入所を拒否した場合の説得方法」をご参照ください。
ステップ②:入所先を探す
話し合いが終わったら、希望する入所先を実際に探しましょう。
入所先を探すうえで押さえておきたいポイントは、下表のとおりです。
ポイント | 詳細 |
ご本人の希望条件 | ・どのような生活を送りたいか ・どこまで介助してほしいか |
立地 | ・自宅から近い方がよいか ・ご家族の住まいから近い方がよいか ・アクセスはよいか ・近くに買い物できる場所などはあるか |
予算 | ・初期費用はいくらか ・月額利用料はいくらか ・減免制度を活用できるか ・何年施設を利用できるか ・今後要介護度によって費用はどれだけ上がるか |
入居条件 | ・入居条件を満たしているか ・退去条件はあるか |
医療・介護体制 | ・どこまで介助してくれるか ・医療行為にも対応しているか ・看取りまで行っているか |
気になる施設が見つかったら資料請求しておき、複数の候補を比較検討しましょう。
複数の施設や施設形態を見ておくことで、入所できるタイミングが増え、在宅での介護負担を軽減できます。
なお、弊社ゴールドエイジでは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームを多数運営しております。
資料請求を希望する方は、お近くの施設一覧ページをご覧ください。
ステップ③:見学や体験利用を経て入所先を決める
希望に近い施設を複数見つけたら、見学や体験利用して入所先を決定しましょう。
見学や体験利用で確認しておきたいポイントは、以下のとおりです。
- 介護・看護のサポート
- 介護スタッフの表情
- 居室や設備の広さ、充実度
- 食事のバリエーション
- 施設の外観
- 施設内の清掃の様子
- 入所者の男女比や年齢層
- 平均要介護度
- (多床室の場合)プライバシー確保の状況 など
少なくとも2〜3施設見学し、可能であれば体験利用してみましょう。
体験利用の費用は施設によって異なりますが、1泊2日3,000円、もしくは2泊3日6,000円ほどです。
見学や体験利用を経て、ご本人もご家族も納得できる施設を見つけていきましょう。
親が施設入所を拒否した場合の説得方法
親が施設入所を拒否する理由と主な対応方法は、下表のとおりです。
拒否する原因 | ご本人の思い・気持ち | 対応方法 |
自宅で過ごしたい | ・住み慣れた場所から離れたくない ・知っている人が近くにいてくれると安心 | ・デイサービスの頻度を増やし、自宅から離れる時間を増やす ・ショートステイを活用し、外泊する機会を確保する |
ご家族に見捨てられたと感じる | ・介護施設は「姥捨山(うばすてやま)」だという価値観がある ・子どもが親の面倒をみて当然 | 心配しているからこそ、施設入所をすすめていることを伝える ・「これからも元気にいてほしいからこそ」 ・「自宅では難しいことも施設に入ることでできることもある」 ・「元気になればまた自宅に戻って生活できる」など |
自分にはまだ介護が必要ないと感じている | ・自分はまだまだできると思う ・人の介護を受けるのは恥ずかしい | ・ケアマネジャーや地域包括支援センター、主治医に相談する ・第三者から介護や施設入所の必要性について説明してもらう |
ここで重要なのは、ご本人の気持ちをないがしろにして施設入所を進めてはいけないということです。
ご本人は高齢になりできないことが増え、生活環境の変化や新しい人間関係を構築することに不安を感じています。
まずはご本人の気持ちを汲み取ったうえで、ご家族の気持ちや思いを丁寧に伝えましょう。
親の施設入所に関するよくある質問
親の施設入所に関してよくある質問は、以下の2つです。
- 罪悪感や寂しい気持ちをやわらげる方法はある?
- 面会はどれくらいの頻度で行ったらよい?
それぞれの回答について解説します。
質問①:罪悪感や寂しい気持ちをやわらげる方法はある?
施設入所している親にご家族が定期的に会いに行くことや、1人で抱え込まず相談することが重要です。
親を施設に入れることは決して悪いことではありません。
「介護している私がもっと頑張ればよかったのに」と、自責の念を持つ必要はないのです。
それでも罪悪感や寂しい気持ちが強い場合は、以下の方法を試してみましょう。
- 思い出の品や写真を持参する
- ケアマネジャーや同じ悩みを抱えている方と話す
- スタッフと良好な関係を築く
思い出の品や写真を持参することで、ご本人が落ち着ける環境をご家族自身が作れます。
また、ケアマネジャーや同じ境遇の人と話すことで、悩みや不安を解消するきっかけになるケースも少なくありません。
スタッフとのコミュニケーションも密に取れれば、その分ご本人の様子を聞く機会が増え、施設内でも穏やかに過ごせていることを感じられるでしょう。
質問②:面会はどれくらいの頻度で行ったらよい?
面会は可能であれば、月1回以上行くことをおすすめします。
ご家族とのふれあいはご本人にとって寂しい気持ちを和らげるうえ、ご家族としかできない話をすることで気持ちを落ち着かせる効果があるためです。
なお、施設入所している親との面会について、確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
- 事前に面会日時を電話でスタッフに伝えておく
- ご本人やスタッフへのお土産を持ち込む場合、必ず先に伝えておく
- 施設に関するネガティブな内容をご本人から聞いたときは、スタッフにも事実確認をする
担当スタッフがいる日に合わせて面会日時を設定できると、ご本人の過ごし方などについて情報共有しやすくなります。
面会の中でネガティブな話が聞かれたときは、ご家族にできることを相談する形でスタッフに伝えることで、良好な関係が築きやすくなるでしょう。
なお、弊社ゴールドエイジのサービス付き高齢者向け住宅では、ご家族にはできるだけ面会に来ていただきたいという思いがあります。
「介護・看護・医療・生活支援・ご家族で連携して、入居者様の暮らしを充実したものにする」という考えで運営しているためです。
よって介護施設と異なり、面会の事前連絡は必ずしも必要としません。
ただし、遠方などからいらっしゃる場合は入居者様の不在で会えなかったということがないよう、事前に確認の連絡を入れていただくとスムーズです。
お土産なども事前の連絡は必要なく、入館の際にひと声かけていただければ構いません。
このように、サ高住はご本人の暮らし方だけではなく、面会にいらっしゃる方にとっても自由がきく点が魅力といえます。
まとめ:親の施設入所は少しずつ検討しよう
親の施設入所は、ご本人にとってもご家族にとっても大きな決断です。
両者が納得して施設に入所できるよう、話し合いや情報収集などの準備は丁寧に進めましょう。
なお、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は自宅と似た環境で過ごせる分、入居の拒否が少ない施設です。
24時間体制の介護は不要なものの、困ったときに相談したいという方にはぴったりな住まいとなっています。
施設入所の第一歩としてサ高住を知りたい方は、お近くの施設一覧ページをご覧ください。
この記事の監修
間井 さゆり
役職 | 内部監査室長 |
保有資格 | 介護支援専門員(ケアマネージャー) |
2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。