公開日:2024.06.11
更新日:2024.06.17

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いとは?類似施設との比較も解説

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いとは?類似施設との比較も解説

介護施設を探す際は、ご本人に合った生活の場を見つけることが大切です。

しかし、介護施設には特別養護老人ホームや介護老人福祉施設など複数の種類があるため、「何が違うのか」「どこがよいのか」など疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いについて解説します。

介護老人保健施設や養護老人ホームといった類似施設との比較も紹介するので、施設入所を検討している方はぜひ参考にしてください。

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違い

実は、特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は、同じ介護施設です。

名称が異なるのは、それぞれ根拠となる法律が違うためです。

特別養護老人ホームが老人福祉法に基づくのに対して、介護老人福祉施設は介護保険法を根拠法としています。

以下は、各法律の条文です。

【老人福祉法】

第二十条の五 特別養護老人ホームは、第十一条第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を入居させ、養護することを目的とする施設とする。

【介護保険法】

この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入居定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入居する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入居する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。

両施設とも介護を必要として在宅生活が難しい高齢者に対して、24時間体制で食事や入浴といった介護サービスを提供しています。

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は名称は異なるものの、入居条件やサービス内容に違いないと覚えておくとよいでしょう。

引用元:


特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは

特別養護老人ホームの利用を検討する際のポイントは、以下の3つです。

  1. 入居条件
  2. サービス内容
  3. 費用相場

それぞれの内容について詳しく解説します。

すでに特別養護老人ホームへの入居を決めているという方は、施設一覧ページをぜひご覧ください。


入居条件

特別養護老人ホームの基本的な入居条件は、以下の2つです。

  • 65歳以上で、要介護3以上の認定を受けている方
  • 65歳未満(40歳から64歳)で、特定疾病のある方

ただし、65歳以上の要介護1または要介護2の方でも、以下のような特別な事情がある場合は、入居が認められます。

  • 認知症によって日常生活が難しくなるような症状などがある
  • 知的障害や精神障害などがあり、日常生活に支障を来す
  • 家族による虐待などが疑われ、心身の安全・安心の確保が難しい
  • 1人暮らし、あるいは家族が高齢などで支援が難しく、地域のサービス供給も十分ではない

また、40歳から64歳の方でも特定疾病を抱えている方は、特別養護老人ホームに入居できる可能性があります。

特定疾病とは加齢との関係が認められており、要介護や要支援の状態になる割合が高いと考えられる疾病を指します。

2024年4月現在、特定疾病には関節リウマチや筋萎縮性側索硬化症などの16種類の病気が指定されています。

65歳未満の方でも特定疾病を患っていれば、常時介護が必要となるでしょう。

そのような方々も安心して日常生活を過ごせるように、特定疾病を理由とした入居が認められています。

引用元:


サービス内容

特別養護老人ホームで提供される主なサービス内容は、以下のとおりです。

  • 身体状況にあわせた食事の提供
  • 定期的な入浴
  • 日常的な介助(排泄介助、歩行介助など)
  • 健康管理や緊急時の対応
  • 機能訓練やレクリエーション
  • 居室の清掃などの生活支援
  • 看取り

特別養護老人ホームに入居すると、生活のさまざまな場面でサポートを受けられます。

施設には介護士や看護師などの専門職員が常駐しており、入居者1人ひとりにあった適切なケアを提供してくれます。

さらに、施設長や生活相談員が入居者やご家族からの相談に応じてくれるので、何か困ったことがあっても気軽に相談できるでしょう。


費用相場

特別養護老人ホームの費用相場は、10万円〜15万円です。

ただし、特別養護老人ホームの費用は、居室のタイプや所得によって大きく異なります。

たとえば、ほかの入居者と一緒の部屋で生活する「多床室」と、1人で1部屋を使用する「個室」では、個室の方が月額の居住費が高額です。

また、ご本人の要介護度が高くなると、施設介護サービス費が増加します。

月額費用の内訳や詳しい金額について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】【早見表付き】特別養護老人ホームの費用を居室タイプ別に解説!軽減方法も


特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)と他施設との違い

ここでは特別養護老人ホーム以外の介護施設として、以下の3つをピックアップして解説します。

  1. 介護老人保健施設
  2. 養護老人ホーム
  3. 有料老人ホーム

特別養護老人ホームとの違いを見ていきましょう。


介護老人保健施設との違い

 特別養護老人ホーム介護老人保健施設
目的中重度の要介護高齢者が、長期的に生活を過ごせるよう必要な支援を行う要介護高齢者にリハビリ等を提供して在宅復帰を目指す
入居条件原則、65歳以上で要介護3以上の高齢者原則、65歳以上で要介護1以上の高齢者
サービス内容食事や介護サービスがメインリハビリやレクリエーションがメイン
居室タイプ多床室または個室タイプ多床室または個室タイプ
費用相場月額10万円~15万円月額7万円~13万円

特別養護老人ホームには入居期間に定めがない一方で、介護老人保健施設は原則3か月間までしか入所できません。

介護老人保健施設とは、介護を必要とする高齢者が在宅復帰できるよう支援する介護施設です。

介護老人保健施設も入所先の選択肢に挙げる際は、あくまでも在宅復帰を目指すための施設である点に注意しましょう。

引用:厚生労働省|サービスにかかる利用料


養護老人ホームとの違い

 特別養護老人ホーム養護老人ホーム
目的中重度の要介護者に対して、生活全般を支援する生活環境や経済的困窮を抱える高齢者を養護(※)して、社会復帰を支援する
入居条件原則、65歳以上で要介護3以上の高齢者身体的に自立しているが、環境や経済的問題により、在宅生活が困難な方
サービス内容食事や介護サービスがメイン食事、健康管理などの自立支援がメイン
居室タイプ多床室または個室タイプ多床室または個室タイプ
費用相場月額10万円~15万円月額0円~14万円
※施設を用いて、保護を必要とする人の世話をすること

特別養護老人ホームは基本的にご本人と施設の間で契約を結び、入居が決定します。

一方、養護老人ホームは市区町村など行政側がご本人の状況を調査し、入居の必要性を判断します。

養護老人ホームは、行政による措置入居が原則となっている点にご注意ください。


有料老人ホームとの違い

 特別養護老人ホーム有料老人ホーム
目的中重度の要介護者に対して、生活全般を支援する自立の人から要介護者まで幅広くサービスを提供する
入居条件原則、65歳以上で要介護3以上の高齢者自立から要介護5までの高齢者
サービス内容食事や介護サービスがメイン食事や介護サービスにくわえて、レクリエーションや行事が豊富
居室タイプ多床室または個室タイプ個室タイプが主流
費用相場月額10万円から15万円月額10万円以上

特別養護老人ホームと有料老人ホームでは、運営主体が異なります。

特別養護老人ホームは、社会福祉法人(※)や自治体が運営する公的な施設です。

※地方自治体から援助を受けた非営利組織

一方の有料老人ホームは、株式会社など利益を追求する民間事業者が経営する施設です。

有料老人ホームの基礎知識について知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】【一覧表付き】有料老人ホームとサ高住の違い|おすすめな人の特徴も解説


特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に関するよくある質問

特別養護老人ホームの利用を検討する人が、疑問を感じやすいポイントを2つ解説します。

  1. 申し込み後はすぐに入居できる?
  2. 利用が向いている人は?

それぞれの回答を見ていきましょう。


質問①:申し込み後はすぐに入居できる?

特別養護老人ホームには定員があるため、申し込み後すぐに入居できるわけではありません。

定員に空きが出たときに、初めて入居が可能になります。

実際、厚生労働省によると、待機者の減りは約4年で10%程度にとどまっています。

平成元年度令和4年度
入居申し込み者約29万2,000人約25万3,000人
うち、自宅待機者約11万6,000人約10万5,000人

したがって、入居を希望する場合は複数の施設に申し込み、入居先を複数確保しておくのが賢明でしょう。

また、特別養護老人ホーム以外の施設も視野に入れることで、待機期間を短縮する方法も考えられます。

ご本人やご家族の状況に応じて、適切な方法を選択しましょう。

引用元:厚生労働省|特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)に関する調査結果を公表します


質問②:利用が向いている人は?

特別養護老人ホームのメリット・デメリットは、下表のとおりです。

メリットデメリット
・公的な助成があるため、比較的安い費用で入居できる
・看取り介護まで対応してくれる(終身利用が可能)
・要介護度が重度でも24時間体制で介護を受けられる
・空き待ちで、入居まで待機期間が発生しやすい
・要介護度が軽度の場合は入居が難しい
・医療ニーズが高い場合、入居を断られる可能性がある

上記をふまえると、特別養護老人ホームは、以下のような人に向いている施設といえます。

  • 食事や入浴など日常生活全般に手厚い介護が必要な人
  • できるだけ費用を抑えたい人
  • 最期まで施設で見守ってほしい人

一方で、在宅復帰を目指す方や常に医療処置が必要な方は不向きです。

ご自身やご家族の状況と、特別養護老人ホームのメリット・デメリットを照らし合わせて、利用の可否を判断しましょう。


まとめ:特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は同じ施設

特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は、同じ種類の施設を意味します。

名称は異なりますが、提供されるサービスや入居条件などは同じです。

特別養護老人ホームの利用をご検討される際は、メリット・デメリットと他の介護施設との違いを把握することから始めてみましょう。

なお、弊社ゴールドエイジでは、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームを運営しております。

介護施設を探している方は、施設一覧ページをぜひご覧ください。

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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。