公開日:2024.06.06

身元引受人は老人ホームの入所時に必須?条件や現状・いない場合の対処法も

身元引受人は老人ホームの入所時に必須?条件や現状・いない場合の対処法も

老人ホーム入所時に、身元引受人を求められるケースは少なくありません。

そのため、老人ホームへの入所を検討する場合は、身元引受人になるための条件を知る必要があります。

この記事では身元引受人の条件に加えて、老人ホームにおける身元引受人の現状や、いない場合の対処法を紹介します。

老人ホームへの入所を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

老人ホーム入所時に必要な身元引受人とは

施設や病院において、約9割以上が身元引受人を求められます。

ここでは身元引受人の基礎知識として、以下の2点を解説します。

  1. 役割
  2. 保証人との違い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

引用元:みずほ情報総研株式会社|平成29年度老人保健事業推進費等補助金 介護施設等における身元保証人等に関する調査研究事業


役割

身元引受人の役割は、以下のとおりです。

  • 金銭的な問題が生じたときの保証人
  • ご本人に代わっての意思決定
  • 緊急の連絡先
  • 生活に必要な諸手続き
  • 亡くなった場合の身柄や荷物の引き取り

利用料金の滞納や支払いが難しくなった場合、身元引受人が支払う必要があります。

また、治療方針の意思決定や入院時の手続きなども役割の1つです。

老人ホーム入所中に起こりうる、さまざまな事柄で対応が求められると覚えておきましょう。


保証人との違い

保証人は、「身元保証人」と「連帯保証人」に分けられます。

 身元保証人連帯保証人
役割身元保証金銭の連帯債務
求められるシーン・治療の方針の決定
・入退院の手続き
・施設の器物損壊や他の入所者に怪我を追わせた場合の対応 など
利用料金の滞納時 など

ただし、名称をはっきりと分けず、身元引受人と保証人双方の役割を担う人物として「身元引受人」や「保証人」と呼ぶケースも少なくありません。

なお、すべての役割を担う場合は1名を立てますが、施設によっては連帯保証人と身元引受人を1名ずつ立てる場合もあります。

入所を検討する際は、身元引受人が請け負う役割の範囲や人数も確認するとよいでしょう。


老人ホーム入所時の身元引受人になる条件

身元引受人になるための条件は、法律で定められているわけではありません。

しかし、施設によって以下のような条件を設けているケースがあります。

  • 資産や収入を証明する資料の提出
  • ご家族や親族であること
  • ご高齢でないこと

身元引受人は金銭的な保証人としての役割があるため、支払い能力の確認が求められます。

また、ご本人に代わって意思決定などの対応がしやすいよう、親族か否かや年齢について問われるケースも少なくありません。

ただし、施設によっては友人や知人などでも可能な場合もあるため、事前に確認するとよいでしょう。


老人ホームにおける身元引受人の現状

老人ホームにおける身元引受人の現状として、以下の3点を解説します。

  1. 身元引受人がいない入所者の割合
  2. 身元引受人がいない場合における施設側の対応
  3. 身元引受人がいない場合の対処法

それぞれ確認していきましょう。


身元引受人がいない入所者の割合

介護施設のうち、身元引受人がいない方が1人以上いる施設は、施設全体の2割程度です。

身元引受人がいない方の人数で分けると、以下の割合になります。

身元引受人がいない方の人数全施設からみた割合
1人7.1%
2~3人6.3%
4〜10人4.5%
11人以上2.1%

また、身元引受人がいない方が1人以上いる施設の中でもっとも多いのは、以下の3つです。

  1. 養護老人ホーム
  2. 軽費老人ホーム
  3. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

逆に言うと、上記3施設は、身元引受人がいない場合でも入所できるケースが多いといえます。

身元引受人が見つからない方は、上記の施設から入所を検討してみるのもよいでしょう。

特別養護老人ホームについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いとは?類似施設との比較も解説

引用元:みずほ情報総研株式会社|平成 29 年度老人保健事業推進費等補助金 介護施設等における身元保証人等に関する調査研究事業
引用元:関東管区行政評価局|高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機) -入院、入所の支援事例を中心として-


身元引受人がいない場合における施設側の対応

身元引受人がいない場合、施設側の対応は下表のように分かれています。

施設側の対応内容割合
身元保証人等が必要になる場面ごとに個別に対応する50.3%
入所をお断りする20.6%
身元保証会社を紹介する6.0%
身寄りがないまま入所させる1.7%
成年後見人制度の利用を促す13.9%
その他の対応8.7%

臨機応変に対応してくれる施設もありますが、入所を断られる老人ホームも少なくないため注意が必要です。

身元引受人がいない場合の対処法については、次項を参考にしてください。


身元引受人がいない場合の対処法

身元引受人がいない場合の対処法は、以下の3点です。

  1. 身元引受人が不要の老人ホームを探す
  2. 成年後見制度を活用する
  3. 身元保証会社を利用する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

対処法①:身元引受人が不要の老人ホームを探す

老人ホームの中には、身元引受人がいなくても入所できる施設があります。

施設に入所すると身元引受人が必要なケースが出てくるものの、その場合は施設によっては代替案の提案が可能です。

後述する成年後見人や身元保証会社の活用もあるため、身元引受人がいないからと入所を諦めずに事前に相談してみましょう。

身元引受人がいらない施設をお探しの場合、施設一覧ページでお近くの施設をご覧ください。

対処法②:成年後見制度を活用する

身元引受人がいない場合、成年後見制度を活用できれば入所を許可する老人ホームがあります。

成年後見制度とは、認知症や障害などで判断力が低下した方の財産を守るための制度です。

入所者の財産管理や契約などの行為を、ご本人に代わって行う成年後見人を裁判所またはご本人が判断力のあるうちに決定します。

成年後見人は、以下のような方でも選ぶことが可能です。

  • 友人
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会福祉士

成年後見人がいれば、身元引受人がするようなご本人に変わる意思決定や金銭的な管理などもできます。

ただし、成年後見人でも治療方針の決定はできないので、その場合の対応については施設と相談するとよいでしょう。

対処法③:身元保証会社を利用する

身元保証会社は、老人ホーム入所時に必要な保証人になったり、亡くなった後の対応をしたりする会社です。

民間企業やNPO法人などが運営しており、身元引受人としての役割以外にも、日常生活上の支援や財産管理など多くのサービスを提供しています。

ただし、利用内容に応じて費用が決まるため、必要以上のサービスを選んで費用が高額にならないように注意しましょう。

なお、身元保証会社を決める場合の、チェックポイントは以下の4つです。

  1. 何のサービスを求めるか要望を明確にする
  2. 自分自身の支払い能力を確認する
  3. 保証会社のサービス内容を確認する
  4. 契約の変更や解約について確認しておく

身元保証会社は公的な機関ではない分、倒産の可能性があり、その場合は老人ホームの退去を求められる可能性があります。

消費者生活センターや地域包括支援センターに相談しながら、しっかり選択しましょう。

介護の悩みについて相談できる窓口について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】介護の悩み相談ができる窓口一覧|負担軽減が期待できるサービスも解説


老人ホームの身元引受人に関するよくある質問

老人ホームの身元引受人について、よくある質問は以下の2つです。

  1. 身元引受人は変更できる?
  2. 入居者が死亡した場合の対応は?

それぞれの質問に対する回答を紹介します。


質問①:身元引受人は変更できる?

結論からいうと老人ホームへの入居後、身元引受人を変更することは可能です。

身元引受人が死亡したり、身元引受人が所有する資産に変化があったりした場合は、身元引受人の変更が必要になってくるでしょう。

ただし、最初に身元引受人を選んだときと同様に、老人ホームが求める条件を満たす必要があるので注意してください。


質問②:入居者が死亡した場合の対応は?

入居者が死亡した場合、身元引受人がいれば身柄や荷物の引き取り、葬儀や火葬にも対応します。

しかし、身元引受人がいない場合は、以下の状況に応じて対応が異なります。

  • 身元保証会社を利用している場合
  • 利用していない場合

身元保証会社のサービス内容に含まれていれば、入居者が死亡した場合に身元引受人と同じ対応が可能です。

また、成年後見人にとって、死亡したあとの対応は義務ではありません。

成年後見人の善意で対応してくれる場合がありますが、もし誰も身寄りがない場合は市町村が遺体の引き取りや火葬などの対応をします。

入居者が死亡した場合の対応でトラブルが起きないよう、事前に取り決めておくとよいでしょう。


まとめ:身元引受人は老人ホーム入所時に必要なケースが多い

多くの老人ホームでは、入所条件に身元引受人がいることが含まれます。

しかし、老人ホームによっては身元引受人がいなくても入所が可能です。

老人ホームの入所を検討する場合は、身元引受人の準備が可能かどうかを明確にして、条件に合った施設を選ぶようにしましょう。

なお、弊社のゴールドエイジのサービス付き高齢者向け住宅へ入居する際は、連帯保証人と身元引受人を1名ずつ立てていただく必要があります。

とはいえ、連帯保証人や身元引受人の年齢、資産や収入などの要件はなく、入居のハードルは低めです。

入居者様の中には、身元保証会社を利用されている方もいらっしゃいます。

有料老人ホームをお探しの方は、以下の施設一覧ページもあわせてご覧ください。

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この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。