公開日:2024.07.09

要介護3でもらえるお金はある?状態像や利用できるサービス一覧も紹介

要介護3でもらえるお金はある?状態像や利用できるサービス一覧も紹介

要介護3の方を自宅で介護する場合、介護者には肉体的・精神的な負担がかかります。
介護者の負担を軽くしつつ、ご本人が住み慣れた自宅で生活を続けていくためには、適切な介護サービスの利用がおすすめです。

しかし、介護サービスを利用すると一定の費用が発生するため、「経済的に大丈夫だろうか」と不安に感じる方も多いでしょう。

この記事では、要介護3の介護で発生する経済的負担を軽くする方法を紹介します。
要介護3の基本的な状態や利用できるサービスも解説するので、ぜひ参考にしてください。

要介護3でもらえるお金はある?

要介護3の介護認定を受けたとしても、残念ながら国・地方公共団体や民間の団体から支給されるお金はありません。
しかし、以下の5つの公的な制度を活用することで、介護にかかる経済的負担を軽減できます。

  1. 区分支給限度額
  2. 福祉用具のレンタル・購入費用に対する給付
  3. リフォーム費用の支給
  4. 紙おむつ費用の助成
  5. 負担限度額の超過費用に対する払い戻し

各制度の具体的な内容を見ていきましょう。


制度①:区分支給限度額

介護保険から支給される費用には、「区分支給限度額」と呼ばれる1か月あたりの上限額が設けられています。

区分支給限度額の範囲内であれば、介護サービスを1割から3割の自己負担額で利用できます。
要介護3の区分支給限度額は27,048単位となり、円に換算するとおよそ27万480円です。
上記の金額を、1割から3割負担にあてはめた負担額が下表です。

自己負担の割合1割2割3割
自己負担額27,048円54,096円81,144円

区分支給限度額によって、全額自己負担するよりも出費を大幅に軽減できます。
区分支給限度額が適用される介護サービスの種類は、後述の「要介護3で利用できるサービス一覧」をご覧ください。


制度②:福祉用具のレンタル・購入費用に対する給付

福祉用具とは、要介護者の日常生活を支援したり機能訓練などで使用されたりする用具を指します。
このような福祉用具をレンタルして利用できる制度が「福祉用具貸与」です。
福祉用具貸与を利用すると、車いすや特殊寝台(電動ベッド)などの福祉用具をレンタルできます。

福祉用具貸与にかかる費用は、レンタルにかかる費用の1割です。
一定以上の所得がある方の場合は、2割または3割負担となります。

また、介護保険には、特定福祉用具を購入した際に給付を受けられる制度が存在します。
特定福祉用具とは、使用者の肌が直接ふれたり形態や品質が変化したりして再利用が難しい用具のことです。

  1. 腰掛便座
  2. 入浴補助用具(入浴用いすや浴槽用手すりなど)
  3. 簡易浴槽
  4. 移動用リフトのつり具部分
  5. 自動排泄処理装置の交換可能部品

要介護3の場合、年間10万円を上限として特定福祉用具の購入にかかる費用の9割(一定以上所得がある方は、2割または3割)まで払い戻しを受けられます。
ただし、特定福祉用具の払い戻しを受けるためには、いったん全額を支払ったあとに市区町村に申請を行う必要がある点に注意しましょう。


制度③:リフォーム費用の支給

要介護3の場合、20万円を上限としてリフォーム費用の9割相当額を受け取れます。
支給を受けられるリフォームの例は、以下のとおりです。

  1. 段差の解消
  2. 手すりの設置
  3. 引き戸への取替え
  4. 洋式便器への取替え
  5. 床や通路面にある材料の変更
  6. 上記の工事に伴い必要となる住宅改修

なお、一定以上の所得がある場合は2割、特に所得が高い場合は3割を自己負担する必要がある点に注意しましょう。


制度④:紙おむつ費用の助成

要介護3の場合、紙おむつの購入費用に助成を受けられます。
対象者の要件を満たしたうえで、住まいのある地方自治体に申請することで、購入費用の一部を負担してもらえるのです。

具体的には、紙おむつ購入時に使える助成券の交付や、購入費用の一部を指定口座へ振り込むなどの支援を受けられます。

なお、地方自治体によって対象者や助成の内容が異なるため、地方自治体の窓口やWebサイトから詳細を確認しましょう。


制度⑤:負担限度額の超過費用に対する払い戻し

介護保険制度には、自己負担額が高額になった際の軽減措置として「高額介護サービス費制度」が設けられています。
高額介護サービス費制度とは、1か月に自己負担する介護サービス費用について上限を設けて、サービス利用者の経済的負担を軽減する制度です。

具体的には、利用者負担額の合計が所得に応じた限度額を超えた場合、その超過分が払い戻されます。
利用者負担額が大きくなったときは、高額介護サービス費制度を活用しましょう。


制度⑥:障害者控除

障害者控除とは、納税者または生計をともにする配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合に受けられる所得控除のことです。
障害者控除の対象者に該当する場合は、要介護認定の有無にかかわらず、所得金額から一定額が差し引かれます。

身体障害者手帳などを持っていない65歳以上の方で、寝たきりや認知症などで障害者に準ずると区が認めた場合は、「障害者控除対象者認定書」が発行されます。
所得税や住民税が減額されることで、サービス利用費や生活費を確保しやすくなるでしょう。


要介護3とは

要介護3とは、日常生活のあらゆる場面で介護を必要とする状態です。
ここでは、要介護3の基礎知識として以下の3つを解説します。

  1. 基本的な状態
  2. 要介護2との違い
  3. 要介護4との違い

それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。

要介護3の方を介護する場合、要支援や要介護1・2の方を介護するよりも介護者の肉体的・精神的な負担は大きくなります。
そのため、要介護3の認定を受けたことを機会に、入居施設の利用を検討してもよいでしょう。
現在、入居可能な介護施設を探しているという方は、施設一覧ページをぜひご覧ください。


基本的な状態

要介護3になると、日常生活のほとんどの場面で介護者による見守りや支援が欠かせなくなります。
代表的な支援は、下表のとおりです。

介助が必要になる場面具体的な介助内容
歩行や移動転倒を防ぐために見守る、体を支える
食事食べこぼしや異食(※)がないように見守る、食事介助する
入浴・洗身や洗髪に洗い残しがないか、確認する
・手の届かない部位を介護者が洗い流す
認知機能・今日の日付や予定などをその都度伝える
・認知症による問題行動に対応する
※食べ物ではないものを口に入れてしまう行為

要介護3になると、過去にできていた動作に困難を抱えたり、認知機能が低下したりします。
そのため、上記のような介護者の見守りやサポートが必要になる場面は多くなっていくでしょう。


要介護2との違い

要介護2と要介護3の違いは、下表のとおりです。

要介護2要介護3
食事見守りまたは一部介助一部または全介助
歩行や移動見守りまたは一部介助一部または全介助
入浴見守りまたは一部介助一部または全介助
排せつ見守りまたは一部介助一部または全介助
買い物や掃除部分的な支援が必要全面的な支援が必要
要介護認定基準時間※50分以上70分未満70分以上90分未満
認定者の男女合計数118万8,630人92万4,828人
※認定を受ける方の能力や介助方法などから統計データに基づいて推計された介護に要する時間を分に換算したもの

要介護2と要介護3では、食事や入浴といった日常生活の基本的な動作において、介護者の負担が大きくなります。

立ち上がりの場面を例に挙げてみましょう。
要介護2の場合、介護者の見守りや軽介助(※)で安全を確保できるケースが一般的です。

※体を軽く支える程度の介助

一方、要介護3の場合、以下のような介助が必要になります。

  1. 介護者が、ご本人の腕を引いて前方に体重移動を促す
  2. ご本人の腕をしっかりと掴んで支える
  3. 「足に力を入れてね」「バランスをとってね」などと声をかける

このように、要介護3ではご本人の体重が介護者にのしかかるため、軽介助よりも体への負担が大きくなります。

引用元:厚生労働省|令和6年2月 介護保険事業状況報告(暫定)


要介護4との違い

要介護4と要介護3の違いは、下表のとおりです。

要介護3要介護4
食事一部または全介助全介助
歩行や移動一部または全介助全介助
入浴一部または全介助全介助
排せつ一部または全介助全介助
認知機能理解力や記憶力の低下が顕著になるスムーズな意思疎通が困難になることが多い
要介護認定基準時間※50分以上70分未満70分以上90分未満
認定者の男女合計数92万4,828人89万1,893人
※認定を受ける方の能力や介助方法などから統計データに基づいて推計された介護に要する時間を分に換算したもの

要介護3と要介護4では、認知機能について大きな違いがあります。
要介護3の場合は、今日の日付を覚えられなかったり約束事を忘れてしまったりといった記憶力の低下が顕著になります。

一方、要介護4の場合は認知機能に加えて、判断能力にも低下がみられるようになります。
スムーズな意思疎通が難しくなるため、介護者の精神的な負担が増す傾向にあるのです。

引用元:厚生労働省|令和6年2月 介護保険事業状況報告(暫定)


要介護3で利用できるサービス一覧

要介護3で利用できるサービス一覧は、下表のとおりです。

施設の種類施設の名称
入居施設介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設(老健)
介護療養型医療施設
特定施設入居者生活介護(有料老人ホームや軽費老人ホームなど)★※
介護医療院
通所施設通所介護(デイサービス)★
通所リハビリテーション★
地域密着型通所介護
療養通所介護
認知症対応型通所介護★
訪問事業所訪問介護(ホームヘルプサービス)★
夜間対応型訪問介護★
訪問看護★
訪問入浴介護★
訪問リハビリテーション★
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
地域密着型サービス認知症対応型共同生活介護(グループホーム)★※
地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護★※
地域密着型特定施設入居者生活介護
多機能型や短期宿泊型小規模多機能型居宅介護★
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)★
短期入所生活介護(ショートステイ)★
短期入所療養介護★
そのほか福祉用具貸与★
特定福祉用具販売★
★区分支給限度額の対象となる介護施設
※短期利用に限り区分支給限度額に含まれる

在宅生活を続けたい場合は、通所施設や訪問事業所の活用がおすすめです。
これらの介護施設を利用すると、朝から夕方の時間帯にかけて、ご本人のケアを専門家に委ねられます。

サービス利用中の空いた時間を、介護者のレスパイト(休息)や趣味などの自由な時間にあてられるため、介護者の心身をリフレッシュできるのです。
また、上記の介護サービスを組み合わせて利用することで、より手厚い介護サービスを受けることも可能です。

ご本人やご家族の状況にあわせて、適切なサービスを導入できれば、無理のない在宅介護を実現できるでしょう。


まとめ:要介護3でもらえるお金はないが制度でカバーされる

要介護3の介護認定を受けた場合、国や地方自治体から受け取れるお金はありません。
しかし、公的な制度を活用することで介護にかかる経済的負担をカバーできます。
現在の状況を再度確認していただき、利用できる制度がないか探してみましょう。

なお、要介護3の介護では、介護者に肉体的・精神的な負担がのしかかります。
在宅介護を継続したい場合でも、将来を見越して入居先の施設を探しておくのがおすすめです。

弊社ゴールドエイジでは、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームを運営しております。
要介護3で入居できる介護施設を探している方は、施設一覧ページをぜひご覧ください。

【関連記事】【一覧表付き】有料老人ホームとサ高住の違い|おすすめな人の特徴も解説
【関連記事】2040年問題とは?超高齢化社会の加速で起きることや原因・対策をわかりやすく解説
【関連記事】認知症向け介護施設一覧|入所にかかる費用や選び方のポイントも解説

この記事の監修

間井 さゆり

役職内部監査室長
保有資格介護支援専門員(ケアマネージャー)

2006年入社 ゴールドエイジの創業当初から介護事業運営に幅広く携わり、介護支援専門員、館長、内部監査員などを歴任し発展を支えてきた。
現在は内部監査室長としてゴールドエイジの介護事業運営の適正化、効率化を支えている。